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「な、泣かないでくださいよ! 何で泣くんですか!?」
「女の子にそんなことを言われたのは初めてで……」
ぼろぼろ涙は零れ続ける。
うそでしょ。そんな、だってホントに悪口らしい悪口でもないのに。今まで言われたことないの? これっぽっちも? この人どれだけ愛されて育ったの?
「ごめんなさい。謝りますから泣かないでください。アタシが虐めたみたいじゃないですか……」
「ホノカに虐められた」
「虐めてないですよ!」
アタシはあたふたと手をばたつかせた。そんな、人聞きの悪い!
「ちょっとむっとして言っちゃったんです。泣かないでくださいよー。メンタル激弱なんですか……」
「ホノカが悪いんだよ」
頬を涙で濡らしながらブランは潤んだ瞳でアタシを見つめた。うっ、そういう顔で見つめないでほしい。
「そうですね! アタシが悪いです! だから泣き止んでください。ほら、ね? イイコイイコー」
思わず鳥籠から手を出してブランの頭を撫でた。艶のある髪がするすると手の中で滑っている。歳の離れた弟が泣いていた時によくしてあげていたことを思い出し、少しだけ胸がきゅっとなった。
「ホノカ」
ドキ、と胸が鳴るのと抱き寄せられるのが同時だった。気がつくとアタシは格子越しにブランに抱きしめられていた。
「ちょ」
もがいて腕の中から逃げようとしたけれど、柔らかく包まれているようで全くそうではなく、もがくことさえ出来ないくらい強い力で抱きしめられていた。こんな細腕のどこにこんな力があるんだ。
「わぁ!」
耳にブランの熱い吐息がかかった。甘い匂いが鼻孔をくすぐる。もうっこういうときばっかり息をして!!
「好き。大好き。愛している」
甘い響きに腰の辺りから頭のてっぺんまでに電気が走った。
ふぎー!! アタシは奥歯を噛みしめて耐えた。ぞくぞくする! 怖いのとは違った理由で!
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