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素直な気持ちを吐露するとブランは唇に手を持ってきて考える素振りを見せた。アタシは自分で立てるようになったのでその隙に彼と距離を取った。横目で鳥籠の中に入って来た男の子も確認する。男の子は無言で微笑んでいる。アタシはその姿に違和感を覚えた。
「そういえば今までにも何人か血を飲むことを嫌がった子がいたよ。ホノカもそれと同じということか」
ふむ、とブランは頷くとアタシを見た。赤い瞳が笑う。
「大丈夫だよホノカ。心配しなくてもすぐに慣れるから。好きな味も見つかるよ。今日は手始めにそれを飲んでみよう。気に入らなければ別のを用意するね」
にっこりと笑うブランは可愛らしい。けれどアタシはブランの言い方に少し腹が立っていた。さっきからエサとかそれとか言って、ブランは人間を何だと思っているんだ。吸血鬼は人間をすぐに見下す。
「ブラン。エサとかそれとか言わないで。あなたたち吸血鬼には人はただの食べ物なのかもしれないけど、軽視しないでほしい」
「気をつけよう。さ、ホノカ。それを味見してごらん」
全然人の話を聞いていないなこの吸血鬼! もしかしていつもこんな感じなのか? フェリックスさんと会話しているときもなんとなく話が噛み合っていなかったし!
まぁここでさらに人を見下したような態度をとらないだけまだましなのかもしれないとアタシは思った。なんだか吸血鬼に対するハードルもだいぶ下がってきたような気がする。こいつら吸血鬼には何も期待してはいけないのだ。
アタシははぁ、と小さくため息を吐いた。完全に油断しきっていたアタシの肩をトン、と誰かが叩いたものだから、アタシはビックリして思わず肩を叩いた手を振り払ってしまった。するとゴキッという怖ろしい音が聞こえた。
「あっ!」
アタシは顔面蒼白になった。
「ご、ごめん! ごめんね!? 大丈夫?」
男の子が肩を押さえて悶絶していた。アタシは思わず近づいて彼の身体を触ろうとしたが、寸でのところで思いとどまった。
肩が脱臼している。蚊でも払うような力加減で少し手を払っただけなのに、男の子の肩は外れてしまったのだ。
ゾッとした。アイゼンバーグが人は脆いと言っていた理由が分かった。圧倒的な力の差が人間と吸血鬼の間にはあるんだ。アタシ、人に触れない。今のアタシは人を傷つけてしまう。この男の子にとってアタシはただの化け物だ……。
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