プロローグ

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プロローグ

 何かに深く悩むこともなく、選択と言えるような選択もせずに日々を過ごす。  平凡な女子高生にはそんな日常がお似合いだった。進路に悩み、親子関係に悩み、交友関係に悩み、恋人について悩む、ありきたりな毎日でさえ、時に鮮やかに色づいた記憶として残るのだから、それで良かった。  アタシはドラマチックな展開なんて望んでいなかった。主人公になることを望んでいなかったのだ。だって物語の主人公はみんな必ず辛い目にあって、心の成長を余儀なくされるのだから。それに一歩間違えれば取り返しのつかないことになることばかりが起こる。そんなの狂っている。絶対におかしい。アタシにはそんなの耐えられない。だから、淡々とした日常を過ごせればそれで良かった。  それで、良かったのに。
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