月明かりに照らされて

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僕の彼女は猫みたいな性格だ。たまにゴロゴロと甘えてくることもあるが、それが嬉しくて相手をしていると、急にツンッとしていなくなる。でも僕だけになついてくれているから、可愛くて仕方がない。  僕は彼女と付き合い始めた頃を懐かしく思い出す。あの頃も今も毎日がとても楽しい。いや楽しいと信じたい。  彼女の名前は沙織ちゃんという。住んでいる地区が違うので中学までは別々だったが高校生になってから知り合った。僕たちが通っているのはこの辺りでは有名な進学校である。沙織ちゃんとはクラスは違うが学校が一緒で同じ棟にいる。  沙織ちゃんは色が白くて目が大きく、長いまつ毛をした美少女だ。部活は陸上部に所属していて、背面跳びをしているしなやかな身体のラインは猫と彼女を形容するのにピッタリである。  告白したのは僕の方からだ。沙織ちゃんは「ふふふ」と笑ってするり上手く逃げたが、僕は後を追ってプレゼントを渡そうと思った。ちょっと強引だったが、沙織ちゃんに彼氏がいない事は噂で知っていたし、僕は何としても沙織ちゃんと仲良くなりたかったのだ。僕は自分の顔が赤くなってたら恥かしいなと思いながら俯いて右手に持ったお土産を差し出した。 「これ、貰ってくれないかな」 「なに?私にくれるの?」 途端に沙織ちゃんはパッと顔を明るくした。 「うん。夏休みに海、行ってきたんだ」 僕は、落花生が入っている包み紙を見せた。 「千葉に行ってきたんだよ」  沙織ちゃんは、それを聞くと一段と笑顔になってお土産を受け取った。ちょっと赤くなってるようにも見える。
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