貴族っぽい男を助けました

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あたしの家は一階建てで、寝室と客間があり、後はキッチンと一体型となっているリビング。 出入り口からすぐにリビングという名の、くつろいだり仕事をしたりする空間が広がっている。 その空間には大きなテーブルに椅子が四脚。 壁際にはあたしの仕事道具が入れてあるタンスと戸棚。 作った服を着せるのに使う、頭と手足のないマネキンのようなとトルソーが窓の側に置いてある。 あたしは買ってきた仕事道具が入った紙袋をテーブルの上に置き、キッチンへと向かう。 エプロンを着ながら「テーブルにでも座ったら?」とバカに一応声をかけておく。 しかし、バカはあたしの仕事道具が珍しいようで、タンスと戸棚の引き出しを勝手に開けては、興味津々といった様子。 ……世間知らずなバカな上、精神年齢は子供か。 これが純粋な小さな子どもならこんなに腹立たしくはないのに…。 「それ、あたしの仕事道具。見てもいいけど、くれぐれも触らないでよ。」 「そうか。わかった。」 今度は素直にあたしの言うことをきいてくれる。 「あんた、素直なところもあるのね。」 「………あんたじゃない。俺はザイアス。」 ちょっと褒めるとすぐこれだ。 あたしは肩をすくめながら「あたしはミラよ。」と答え、キッチンに常備してある野菜と干し肉を使ってスープを作成しはじめた。 料理をしながらザイアスを観察しつつ、他愛のない質問をいくつか受け付けるうち、だんだんとどんな人物か見えてきた。 最初に感じた自己中だが、おそらく貴族の中でも身分の高い家柄なのだろう。 言えばなんでも希望どおりになる生活をしていたのではないだろうか? 欲しいと思えば『欲しい』と口にし、したいことがあれば『したい』と口にする。
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