貴族っぽい男を助けました

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だからこそ、思ったままを口にしていたのではないだろうか。 その様子が自己中にみえてしまうのだが、裏を返せば欲望に正直なだけなのだろう。 残念ながら我慢するといったことや、他人を思いやる思慮深さが皆無なのだが、高い身分でちやほやと育てられたら、そんな人間として大切なところも育たないだろう。 ある意味、ザイアスはかわいそうな人間なのかもしれない。 それに、一般的なことを知らなさ過ぎる。 「なあ、ミラ、これはなんだ?」 窓の側に置いてあったろうそくを指差している。 もったいないので滅多に使わないが、やむを得ず夜に仕事するときに使うものだ。 「それはろうそく。真ん中のてっぺんに紐みたいなのあるでしょ?」 「ある。どうやって使うんだ?」 上から下から真横から。 まじまじとろうそくを観察しているザイアス。 「その紐のところに火をつけるのよ。」 「火?燃やすのか?燃やしてどうするんだ?」 「夜、明かりとして使うの。」 「こんな小さいのに、明かりとして使えるのか?」 「けっこう明るいのよ。ザイアスの家では夜の明かりはどうしてるの?」 ザイアスは少し考え込み、「暗くなったらメイドがランタンをいくつも持ってくるんだ。」と金持ち貴族ならでわの答えを返してくれる。 「あらそう。そのランタンの中身、今度見せてもらいなさい。ろうそくが入ってるから。」 こんな調子で、子供でも知っているはずのことを聞いてくる。 「そもそもどうやってろうそくに火をつけるんだ?」 「マッチでつけるの。」 「マッチ?マッチとはなんだ?」 「火をつける道具。ちょうど今から使うけど、見る?」 本日の昼食のスープに入れる材料をすべて切ったため、それを煮込むため今から暖炉に火をつけるところだ。
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