あたしはあたしのために

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「そういやミラ、ベッドからここまでどうやって来たんだ?」 「ん?歩けないから這ってきたの。」 「そうか。這って………這って?!」 やけに驚いているザイアス。 「え?何かおかしい?歩けないから、できる手段をとったまでだけど…。」 すると、くくっと楽しそうにザイアスは肩を揺らしている。 「ミラらしいや。大概の女性は這ってまで窓の外へ行こうとはしないだろうしな。ましてや怪我してるのに。……本当に予想もつかないことをしてくれるから、ミラと一緒は飽きないよ。」 「そうかなぁ。」 自分は至って普通の女性とは思うんだけど……。 まぁ、ちょっと気が強いところがあるのは自覚してるけどね。 それに、怪我して歩けないから這って動いたのに。 歩けるなら素直に歩いてるもん。 「……では、ベッドまでどうやって戻る気かな?」 ザイアスにそう聞かれ、「這って」と即答で答えると、今度は困った顔をされてしまう。 「ミラ…、俺、ミラくらいなら簡単に運べるんだけど。『運んで』って、可愛くおねだりされたら、喜んで運ぶのに。」 おっ、その手があった! ……でも、可愛くおねだりって… どうやれば可愛く見えるのかわからないけど、ひとまずおねだりしてみることにする。 「ザイアス、お願い。ベッドまで運んでくれる…?」 じっとザイアスを見つめながら、『おねだり』してみる。 可愛いかどうかわからない。 「了解。」 悪くはなかったようで、楽しそうに微笑むザイアスにひょいっとお姫様抱っこをされてしまう。 布越しでもわかる逞しい腕に、胸板にドキドキしつつ、腕から落ちないようザイアスの服をぎゅっと掴んだ。 窓から室内へ戻った時に、ソファーに腰かけている男の人が視界に入る。 年の頃は四十代くらい。 白髪混じりの長めの髪を、頭の後ろでまとめている。 「シロイ、待たせてすまない。外の空気を吸いたかったようで、窓の外にいたよ。」
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