貴族っぽい男を助けました

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髪については、あまりにも長くなったら、布の立ち切りバサミで適当に邪魔にならないくらいにバッサリチョッキン。 愛嬌あるねといわれるが、かわいいだのキレイだのとは言われたことはない。 我ながら女捨ててるなぁ……、とは思う。 もう二十歳。 世間様の普通の娘さんは二十歳までにいい相手を見つけて……もしくはむりやり相手を作らされて嫁にいっているようで、二十歳は行き遅れの売れ残りというレッテルを貼られてしまう。 ……だからといって、オンナ磨きをして男に媚へつらうつもりなんて毛頭ない。 もちろん結婚なんて考えられない。 そもそも相手なんかいないし、嫁へ行かそうとするような両親なんていないし。 貧乏だけど、天涯孤独だけと、自由きままな今の生活があたしは気に入っていた。 「さて……」 このまま大通りを歩いていたら、食べ物屋さんの通りに出てしまう。 お財布は閑古鳥な空腹のこの身で、あんないい匂いのする道を歩くなんて拷問だ。 「裏道通って帰ろうかな。」 あたしは食べ物屋さんの並ぶ大通りを避けるため、脇道へと入ってゆく。 脇道へ入った途端、大通りとはガラリと変わる空気。 活気はなく、古くて今にも崩れそうな木や土を素材につくられた住宅が密集し、そこからの様々な生活臭と、しっかり陽の光が差し込まないためか、程よい湿気とカビ臭さが鼻を突く。 道端には、目が虚ろな人が男女問わず座っていたり寝転んていたり。 ……そう、華やかな大通りの裏は貧民街。 あたしは服の繕いや、依頼があったら衣服を作成し、それを仕事としてなんとか生活をしている。 だから、まだここの人達にくらべれば、あたしは恵まれているのかもしれない。 もちろんここの人達だって、仕事をきちんとして、貧しいながらもそれなりに生活している人だってきちんといる。 問題は、そうではない人もそれなりにいるという事実。
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