貴族っぽい男を助けました

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なんで金持ちが貧乏人いじめてんのよ! そう思ったのが先が。 「あんたら、通行の邪魔。どいてくんない?」 と声をかけたのが先が。 甲冑の男の人達が一斉にあたしの方へ視線を向けた。 腕力には自信ないが、足の速さと俊敏性には自身がある。 いざとなったら逃げる! ……その時だった。 あたしに注目が集まった隙を逃さず、取り囲まれていた男の人が急に勢いよく飛び出した。 有無を言わさずあたしの腕をがしっと掴み走り出す。 「なっ、ちょっと!」 「走れ!捕まりたくない!」 仕方なく引っ張られるまま男について走って。 ……しばらく黙って走ってあげていたが、土地勘はないのか道選びが全くなっていない。 このまま進めば袋小路。 「そこの角を右」 仕方なくあたしはそうつぶやくと、あたしの手を引く男は素直に右へ曲がる。 またしばらく進んで「そこ左」と声をかけると、黙って左へ進路をとる。 そうやってしばらく走り、あたしと男の人は甲冑の人達を無事に撒いた。 「……ちょっと…、歩かせて…くんない?もう、……疲れちゃった……んだけど…。」 息も絶え絶えに、まだあたしの手を引いて走っている男の人に、歩くことを希望する。 「……そうだな。もう大丈夫そうだし。」 ふっと足を緩め、男はあたしの手をまだ引きながら、早歩き程度まで進むスピードを落としてくれた。 「あの…、いつまで手を掴んでんの?」 「お前が逃げたら困るからな。こんなとこで一人になったら帰るに帰れん。」 ……なんだか偉そうなこと言ってるけど、要するにあなたは迷子ですか……。 道を知っているあたしがいなくなったら困ると……。 「………自分勝手なやつ。」 男には聞こえないよう小さく毒づく。 さっさとこの人を行きたい場所……目的地へ連れてって、早々にバイバイしなきゃ後が面倒くさそう。
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