貴族っぽい男を助けました

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最初は金持ちに貧乏人(あたしの仲間)が圧倒的な人数差で襲われてると思って声をかけたのに、よく見るとこいつも金持ちっぽい。 金持ち同士のいざこざなんて知ってたら、声もかけなかったのに……。 声をかける前に、こいつの身なりに目がいってたら…… 今更たられば話をしても仕方ないことはわかっているが、それでも少し前の自分の行動をやり直せたらと願ってしまう。 「とりあえず案内してくれ。後のことは後で考える。」 なんて平然と言ってるし……。 年頃の女の子だったら、この容姿の男が家へ行きたいと言ったら、きゃーきゃー言いながら家に連れてくのかもしてないが…… ……下心はなさそうだけど、どうにも納得いかない。 なんで我が家へ連れて行かなきゃいけない? やはり嫌。 あたしは再び手を振り払おうと、さっきよりも強く腕を払おうとしたが、男の手はさっぱり離れない。 「連れてってくれるまで絶対離さない。」 楽しそうに笑みを浮かべる貴族っぽい男。 手を振ったり上げたり下ろしたり捻ったり。 ……残念ながら手が離れそうな気配も、離してくれそうな様子も全く無い。 相手は男。 力の差があるのはわかるが……。 それでも無言の抵抗を続けてみるも、やはり男の手はあたしの手首を掴んだままで……。 「そろそろ諦めたら?俺、連れてってくれるまで離す気ないし。」 「…………」 はぁ…。 本当に離す気はないみたい。 これ以上頑張っても無駄だろう。 不本意でしかないが、仕方なくあたしは歩き始めた。 あたしと共に歩き始める貴族の男。 ………嫌な奴。 ………家まで行くだけ。 門前払いしてやるんだから。 男に掴まれている反対の手で握っている紙袋を、あたしはぐっと握って、強く心の中で決意していた。
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