貴族っぽい男を助けました

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我が家まで、男に手首を掴まれたままあたしは沈黙を通して歩いてゆく。 男も特にあたしに話しかけようとすることはなく、でも手は離さないまま黙々と道を進んでゆく。 どれくらいそうしていたか。 そんなことをしていたら、見慣れた我が家が見えてきた。 モーリンの森のすぐ側。 鬱蒼とした森の入り口の手前に家があると言ってもいいような場所に我が家はあった。 レンガ造りの一軒家。 土や木で造られていた今にも壊れそうな貧民街の建物に比べると、すごくしっかりと造られている。 塀や囲いはないが、お隣もご近所もいないのと、街からも離れており、あたしに仕事を依頼しにくる人が訪れるだけなので、家の周囲は適当に耕し畑としていろいろなものを育てている。 今あたしと貴族の男がいる玄関の近くからは見えないが、家の裏には小さな小川が流れており、生活用水の確保もすぐできる。 あたし的にはとても居心地の良い空間だ。 「……着いたわよ。手離してくれない?」 愛想笑いもできないや。 あたしはいつもより低めのトーンで男に声をかけた。 「この向こうがモーリンの森?」 物珍しそうに森へ視線を向けている男。 森からの冷たい風にサラサラとした金髪がわずかになびいている。 かっこいいんだろうけど、今は苛立ちしか湧いてこない。 「そうよ。入りたかったらどうぞ。街でこの森のこと何て言ってるか知らないけど、狼は出るから気をつけることね。」 つんっと答え、あたしは男の手を振り払った。 今度はすんなりと手を離してくれる。 「ここから街へはどう行けば帰れるんだ?」 「……この道を道なりに行けば街の大通りに続いてる。」 あたしは身を翻して家へと向かう。 もうお腹ペコペコ。
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