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あたしはあたしのために
どれくらいあたしは歌っていたのだろう…。
少し肌寒くなってきた。
でも、ベッドへ戻るために動くのは、少々面倒。
「寒くて我慢出来なくなるくらいまで、ここで過ごそう。」
肌寒いとは言え、いい風も吹いている。
今室内に戻るのはもったいない。
空も茜色となり、日が暮れているというのを感じられ、見ていて飽きない。
あたしはもう一曲歌いはじめた。
穏やかな時が流れる。
……そろそろ一曲歌い終わるという頃だった。
いきなり部屋のドアが開かれ、「ミラ!」とザイアスが息をきらして入ってくる。
とても慌てた様子のザイアスに、少々驚きながら歌を中断し声をかけた。
「ザイアス、おかえりなさい。」
「…ん?ミラ?」
室内より戸惑っているザイアスの声。
もしかして、あたしを探してる?
「窓の外にいるわよ。」
あたしの声を聞いたザイアスが、すぐさま窓から姿を現した。
「……いた。…よかった。歌声はするのに、ベッドにいないから心配した。」
そう言って、あたしのすぐ側へやってくる。
「ちょっと外の空気を吸いたくなったの。」
そう言って、外の夕暮れに視線を移す。
「夕暮れって、すぐに終わっちゃって夜になるけど、その夕暮れの短い時間って、空がすごくキレイになるの。こんなにゆっくりと夕暮れを見たのは久しぶり。」
ザイアスはあたしの座っているイスに手をかけ、一緒に空を見上げる。
「本当に……きれいだな……。」
ザイアスも今、目の前に広がっている光景をきれいだと思ってくれている。
好きな人と同じ気持ちを共有できるだなんて、とても幸せなこと。
しばらく二人で夕暮れを眺めていたのだが、ふとザイアスに質問された。
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