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第1話
今現在、あと少しで十七時を迎えようとしている。
迎えようとしているけど、僕は僕で必死に逃げようにも逃げ難い現実とある意味格闘してた。
理由はごく普通。
普通すぎて笑えるぐらいおかしい話なんだけど、およそ三十分ほど前からクラスメイトの女の子。
平たく言えば隣の席に座ってる女の子と言っていいのか、見た目がギャルちっくだから美女と表現したらいいのかわからないが、そんなギャルな彼女がやることがないからといっても六時間目の授業が終わる数分前から今まで本当にぐっすり寝てるかわからないけど、自分の使ってる机に突っ伏している状態がかれこれ一時間以上続いている。
もちろん、一年の頃からずっと隣の席に座ってる僕は彼女と仲が良いと担任からは見られているようでよく彼女の面倒を見るようにと言われ、ほぼ毎日学校内では今のようになっているということなんだけど、寝ている彼女のことだ。
どうせまた何かを企んでいるに違いない。
そう思って彼女に指一分触れることなく呼び続けているんだけどピクリとも反応がないから本当に寝ているんだろうか? と疑いたくなる。
がしかし、彼女にとってその思い違いこそ彼女の策略で、僕以外のクラスメートには普通に反応してありがと〜とかっていうのに、僕が何かするとからかって来るんだから僕からしたらこの小悪魔めっ! としか言いようがない。
「ねぇ天宮さん。ほんとは起きてるんだよね? 数分前まで本当に寝てたけど僕をからかおうと思ってそうしてるんだよね」
そう言った一分後、寝ているはずの彼女からメッセージが届いた。
どうやら僕が起こさないとずっと起きないと言ってきたのだ。
なぜそこまでして僕に起こしてほしいんだ? って変に悩んでも仕方ない。
早く帰るためにも彼女を起こさないと……。
寝ているであろう彼女を起こそうと彼女の肩に触れるとえっちという声と共に若干日差しで顔が赤くなったんだろう。
机に突っ伏したまま顔を少し赤らめた状態で僕の顔を見ながらそう言ったのだ。
「陽太ってえっちなんだね」
「天宮さんが僕に起こさないとずっと起きないってメッセージ送ってきたから!」
「あたしは触れて起こしてなんて一言も言ってないけど? 陽太は何か良からぬことを考えてたんじゃないのかな?」
確かに天宮さんは一文字も触って起こしてなんて書いてない。
ということは、こうなることがわかってた上でわざとこういう結果になるように仕向けたってわけか。
その上、見た目からは想像できないほど頭の回転が早いし、僕なんかよりも遥かに賢い。
それは姉妹揃って同じようで……。
姉妹と言っても姉がこんな見た目だから妹もこんな感じだろうと勝手に想像してたけど、全く違って彼女のトレードマークの一つである銀色のピアスも妹は付けておらず、というかむしろ、この一年間で天宮さんの妹とも会ったら話すようにはなったけど、一度たりともそんなアクセサリー類を付けているところを見たことはない。
むしろ、見た目がいかにも優等生という感じでそれに加えてツンデレ属性もプラスされるから、まあ刺さる人には刺さるとは思う。
主に僕だけにツンデレだけど。
「……天宮さん起きたし帰る」
「なんでそんなむくれるのさー! それに置いてかないでよっ!」
起きたなら僕はもう帰らせてもらう。
そんなことを思い、カバンを持って教室を出ようとすると、天宮さんも慌てて自分のカバンを持って僕を逃すまいとピッタリついてきた。
「なんでついてくんのさ」
「途中まで後ろ乗っけてもらおうと思って?」
「その?っていうのは何? それに僕が天宮さんを途中まで乗っけてくのは決定事項なんだね」
「当たり前じゃん! この前の罰ゲームはまだ1日残ってるけど?」
罰ゲームと言われてハッとなって思い出す。
何を思ったのか、通常だったら負けることがほぼ決まっているテストの合計点を競うというのを罰ゲーム付きで勝負したんだけど、たったの一点差。猛勉強して今回は勝てると勘違いした結果、それまでは十点以上差をつけられていたけど、一点差という僅差まで追いつけたけど、負けは負け。
素直に負けを認めて罰ゲームを受け入れたんだけど、その内容というのが、今週の月曜から今日の金曜日まで送迎をしてほしいということだったので送迎していたが、すっかり忘れてた。
「……わかった。自転車取ってくるからそこで待ってて」
変に子供のようなところはそのままのようで、子供のように元気な声であ〜い!と返事をし、僕はその言葉を聞いた後、彼女に見送られながら自転車を取りに行った。
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