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濃いピンク色のランドセルを背負った、背が高くて目立つ女の子がいないことに彼は気づいた。
―― 風邪でも引いたのだろうか ―― と、ただ漠然と思っただけだった。
彼は現在、フレックスタイムで仕事に従事しているので、10時出勤18時退社という予定で働いている。
よって、朝8時ごろに起きれば職場には十分に間に合う。
いつもの彼の目覚めは小学生たちの声だった。
家の目の前が、集団登校の集合場所になっているからだ。
あくる日も、その次の日も、あの目立つ小学生はいなかった。
ひと月以上経ってもその姿を見ることはなかった。
気になった彼は、見送り役の主婦に女の子の特徴を話すと、「あー…」と言って愛想笑いを浮かべて彼に頭を下げてから、そそくさと家に帰って行った。
―― おかしな人だ… ―― と、彼は思い、家に入り、リビングに足を踏み入れた途端、目の前にその女の子がいた。
彼は涙が止まらなかった。
「…もうすぐ、49日だな…」と彼はつぶやき、わが子の遺影に向かって、涙ながらに微笑んだ。
―― 完 ――
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