「カモメ」

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救急車を呼ぶ者。 身の危険を感じたのか離れる者。 そして、スマホのカメラを向ける者。 河合雄二はもう動かない。 地に伏せたきり、もう動かない。 その時、群衆の1人に通知が来た。 SNSの着信。 何かと開けば一枚の画像。 暗闇の中にぶら下がる、 長い紐。 ピロンッ チャランッ テロンッ 気がつけば周囲の複数のスマホや携帯が鳴っている。 彼らはみんな画面を確認し いぶかしげな顔をする。 画像は皆同じに見えた。 下へと垂れる黒い紐のような画像。 先端部分は丸まっているがなんだかわからない。 「何だよ、これ。」 若者は一瞬そちらに気を取られ、 次に倒れた男に目がいく。 「…あれ、首がない。」 そこで若者は気づく。 河合雄二の首がないことに。 広がりゆく血とともに先ほどまであった頭部がないことに。 どこかに消えてしまっていることに。 ビルの上のカモメが、 人知れず曇った空へと飛び立っていった…
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