29人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
救急車を呼ぶ者。
身の危険を感じたのか離れる者。
そして、スマホのカメラを向ける者。
河合雄二はもう動かない。
地に伏せたきり、もう動かない。
その時、群衆の1人に通知が来た。
SNSの着信。
何かと開けば一枚の画像。
暗闇の中にぶら下がる、
長い紐。
ピロンッ チャランッ テロンッ
気がつけば周囲の複数のスマホや携帯が鳴っている。
彼らはみんな画面を確認し
いぶかしげな顔をする。
画像は皆同じに見えた。
下へと垂れる黒い紐のような画像。
先端部分は丸まっているがなんだかわからない。
「何だよ、これ。」
若者は一瞬そちらに気を取られ、
次に倒れた男に目がいく。
「…あれ、首がない。」
そこで若者は気づく。
河合雄二の首がないことに。
広がりゆく血とともに先ほどまであった頭部がないことに。
どこかに消えてしまっていることに。
ビルの上のカモメが、
人知れず曇った空へと飛び立っていった…
最初のコメントを投稿しよう!