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「さぁー乗って乗って。凛香ちゃん」
「はい」
大輔さんが先に運転席に乗り込み、エンジンをかける。
私の前を南条さんが通り過ぎていく。彼はスマホを眺めながら歩いていたから、私の姿に気づかなかった。
彼は足を止めて、ポロシャツの胸ポケットにスマホを収め、軽く息を付いた。
サングラスを着けて、顔は見えないが、拓郎と瓜二つの南条さん。
「南条さん」
私はこのまま彼との縁が切れるのを惜しく思い、声を掛けた。
「あ…君は…阿川さん」
「南条さんは何処に宿泊されるんですか??」
「そんなコト訊いて、どうするの?」
彼の訝し気な声に、訊いた事を後悔した。
「それは・・・」
サングラス越しに見る彼の瞳は私の真意を見透かしているような感じだった。
「俺は『ヘブンズホテル&スパ天空』に宿泊する予定だ・・・」
「そうですか…」
「じゃ」
そう言って、彼はヘブンズドホテルの無料送迎バスの停留所に向かって歩いて行った。
「私は海沿いのコテージハウス「ブルーサファイア」です!!」
私は、彼の背中に向かって叫んだ。
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