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客席は満杯で、私はデッキに出て、潮風に当たりながら天空島を目指した。
沖にいくほど海の紺色の深みが増す。
潮の香りに鼻腔を擽られると一年前亡くなった拓郎の事が脳裏を過る。
彼とのデートはいつも海がメイン。
ダイビングと共にサーフィンもしていた拓郎。
(海を見ていると…やっぱり彼を思い出す・・・)
ぼんやりと海を眺めているとさっきのカンカン帽子の彼もデッキに上がって来た。
突然、私の目の前で蹲ってしまった。
「ど、どうしました??」
突然の事で驚いたけど、彼の前にしゃがみ、顔を見た。
「気分が悪い・・・」
「もしかして…船酔いですか??」
「・・・だと思う」
彼は何も答えなかった。
「えーと・・・ともかく・・・座りましょうか・・・」
私は船酔いの彼を立ち上がらせて、直ぐそばの空いていたベンチに座らせた。
「お水…持ってきますね・・・」
「頼む・・・」
男性は口許をハンカチで押さえて私に頼んだ。
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