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自販機で彼の為に購入したペットボトルのミネラルウオーターと自分が持っていた酔い止めの薬をリュックから取り出し、戻った。
「気分はどうですか?」
「最悪だ。こんなにも船が揺れるなんて予想外だ…」
彼はサングラスを外し、素顔を見せた。
「えっ!?」
私は彼の顔を見た途端、その場に縫い留められ、驚愕した。
死んだはずの拓郎と同じ顔が間近に見えた。
年中日焼けした拓郎とは違って彼は色白。
茶髪の拓郎とは違い髪の色は黒髪で短めのツーブロックヘア。
奥二重の切れ長で凛とした光を持つ黒い瞳に彫りの深い顔立ちに長身で細身の体格。
拓郎と違って落ち着いた品のある大人の雰囲気が漂っていた。
拓郎も環境が違ったら、目の前にいる彼のような感じになっていたかもしれない。
死んだはずの婚約者と瓜二つの顔が自分の目に飛び込んできたから、暫く眼が離せなかった。
カラダが脱力し、手に持っていたペットボトルも落とし、デッキの床をコロコロと転がっていった。
「俺の顔に何かついてるのか?」
男性は腰を上げて、床に転がるペットボトルを拾い上げた。
「え、あ・・・すいません…知り合いにそっくりだから・・・」
「俺の名前は南条玲斗(ナンジョウレイト)だ。
君の名前は?」
「私は阿川凛香です」
「阿川さんか…」
「これ…私の酔い止めです。
どうぞ」
私は彼にに酔い止めの薬を渡した。
「ありがとう・・・」
「どういたしまして・・・」
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