幸せな気持ち

5/23
前へ
/361ページ
次へ
部屋の前に着き、副社長は玄関の鍵を開けると「美月、どうぞ」と言って私を先に中へと入れた。 その後ろから自分が入り、ガチャッと鍵を閉める。 すると、人感センサーが反応したのか、ピカッと電気がついた。 「お邪魔します……」 緊張しながら靴を脱いで、自分のスーツケースを受け取ろうと手を伸ばす。 「俺があとで持って行くから。それより寒いだろ。早くリビングに入って」 副社長は2つのスーツケースを玄関の横の廊下に置くと、私の伸ばした手を握り、そのままリビングへと入っていった。 すぐに部屋の電気とエアコンがつけられる。 部屋が眩しいくらいに明るくなり、この間見た重厚感のあるダークグレーの布張りのソファーが目に入ってきた。 ソファーの前には電気屋さんでしか見たことないようなとても大きなテレビがあり、キッチンの横には4人掛けのダイニングテーブルが置いてある。 こんな大きなものを置いてもまだまだ余裕があるリビングのスペース。きっと30畳は優に超えているのだろう。 私は肩にかけていたショルダーバッグと、帰りがけに瞳子さんからもらった紙袋をふわふわのカーペットの上に置いた。 「あっ、そうだ。座る前に先に手を洗わないとな」 副社長は再び私の手を握ると、リビングを出て洗面所へと連れていった。 「美月、ここが洗面と風呂な。好きに使っていいから。ここのスペースが丸々空いているから、自分の化粧品とかここに入れておいていいぞ」 目の前が鏡になっている扉を開けて、収納スペースを見せてくれる。 「タオルはここにかかっているやつと、あたらしいやつはこの下に入ってるからな」 丁寧に説明をしてくれる副社長と鏡越しに目が合い、恥ずかしさからつい視線を泳がせてしまう。 副社長と私はハンドソープのポンプを押して泡立てながら交代で手を洗ったあと、今度は寝室へと移動した。
/361ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30006人が本棚に入れています
本棚に追加