幸せな気持ち

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ベッドで寝てとは言われたものの、勝手に寝室に入るのも憚られ、私はソファーに座り、目の前にあるテレビをぼうっと眺めていた。 テレビでは大好きなお笑い番組が流れているというのに、笑えるどころか、話の内容さえ頭の中に入ってこない。 (あー、落ち着かない……) ソファーの上に横たわるわけにもいかず、私は足を上げて体育座りをすると頭を伏せて縮こまっていた。 「……づき……、美月………」 遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえて、目を開きながらゆっくりと顔を上げる。 目の前にはいつの間にお風呂からあがってきたのか、私の顔を覗く副社長がいた。 「きゃっ……」 綺麗な切れ長の瞳に、無造作な半乾きの髪の毛。 スエットの首元から覗く素肌からは男っぽい色気が漂っていて、そのセクシーさにどうしても男性ということを意識してしまう。 「ごめん、びっくりさせた? こんなところで寝たら風邪ひくだろ。先に寝ててくれてよかったのに……。ごめんな」 私は言葉を発することができず、首を振ることで精一杯だった。 「美月、疲れただろ? 早くベッドに入って。立てる? 立てないなら俺が運んでやるけど」 「だ、大丈夫です……」 なんとか喉の奥から声を出した私は、ソファーから立ち上がって副社長と一緒に寝室へと移動した。 寝室に入り、なんとなく布団の中に入りづらく、ベッドを見つめていると、 「美月、ベッドに入って。心配しなくても何もしないから……」 副社長の手がふわりと私の肩に触れた。 「し、心配なんて………」 冷静を装いながら斜め後ろを振り返る。 「どうした? 俺と一緒に寝たい?」 「そ、そんなこと……」 「ひとりで眠れないなら、美月が寝るまで俺が隣で添い寝してやるけど……。一緒にベッドに入るか?」 「だ、大丈夫です。ひとりで眠れます……」 副社長はベッドに座った私の頭を優しく撫でたあと、「おやすみ」と言っておでこにキスを落とし、寝室から出ていった。
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