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副社長が寝室から出て行ったあと、私はしばらくの間、ベッドに座ったまま動けなかった。
ドクンドクンと心臓が忙しなく動き、おやすみと言ってキスをされたおでこがとても熱い。
おでこにキスをされたとき、私の目の前には副社長の首元から覗く素肌が飛び込んできて、一瞬ドキッとしたあと、なぜか抱き締めてほしいと感じてしまった。
(もう! 副社長が変なことばかり言うから、私まで変なこと考えちゃってるじゃん……)
速度を全く落とさない左胸のあたりをギュッと掴む。
(あっ、そうだ……)
ブラジャーをしたままだったことを思い出し、私はそれを外すと、ベッドの中に入った。
ほんのりと副社長のフレグランスの香りが鼻をかすめる。
あの檜のような大好きな香りだ。
私は副社長に包まれている感覚に陥りながら、次第に意識が遠のいていった。
(今……、何時………?)
ぼんやりと見える時計に焦点を合わせながら、ゆっくりと起き上がる。
時計の針は7時前を指していた。
(いつの間にか寝ちゃってたんだ……)
大きく伸びをしたあと、そっとベッドから出て、音を立てないように寝室のドアをそろりと開けた。
しんと静まり返ったリビングのソファーの上では、まだ副社長が小さな寝息を立てて寝ている。
私はこっそりと寝室から出ると、洗面所へ行き、顔を洗った。
顔を洗い終えたあと、またこっそりと音を立てないようにリビングを通り抜ける。
途中、副社長の布団が少し下に落ちかかっていることに気づき、静かに布団を掴むと、副社長を起こさないようそっとかけた。
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