月に魔法をかけられて

友達思い

「ねぇねぇ彩矢、金曜日どうだった？ 石川さんと一緒に帰って。連絡先交換した？」

「えっ、美月、いきなりそれ聞く？」

そう言いながらも、彩矢の顔はどことなく嬉しそうだ。

「だってー。気になって仕方なかったもん。で、どうだったの？」

「連絡先は……、交換した……」

「わぁー、よかったじゃん！」

恥ずかしそうに話す彩矢に、私は胸の前で小さく拍手をしながら顔を綻ばせた。

「うん……。でもね、連絡先を交換しただけで、あれから石川さんからは何も連絡は来ないし、私から連絡していいのか分からない……」

「どういうこと？」

私は窺うように彩矢の顔を覗き込んだ。

「美月、やっぱり連絡先を教えてくれたのって、社交辞令だと思わない？　私、期待して勘違いだったっていうのがすごく怖くって……。だって、あのスペックにあのルックスじゃん。それにうちの会社にも来るわけだし……」

「そうかな。私には石川さんは彩矢のこと気に入ってるように見えたけど。だって、彩矢を見つめる目もそうだったし、名前も彩矢ちゃんって呼んでたじゃん」

「呼び方はお酒のせいだと思う……。結構飲んでたでしょ」

珍しく彩矢にしてはネガティブな発言ばかりだ。

よほど石川さんのことが気に入ってて、慎重になっているんだろうな。

「私には石川さんは彩矢に気があるように見えたんだけどな」

私がそう呟くと

「違うと思う……。連絡先を交換したときはすごく期待しちゃったんだけど……。やっぱり気があったら連絡して来てくれてるはずだよね……」

彩矢は悲しそうに視線を下に落とした。