オメガさんはオコです!!

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オメガさんはオコです!!

とりあえず。 とりあえず桐生に関わらなければいいだけ。 いいだけなのに……。 なのに、席に着いて早々。 授業中に事件は起きた。 「オイ、一ノ瀬。消しゴム貸せ」 「は?…………自分のを使えば?」 「は?なんでだ…?オレにお願いされたらそれくらい、貸すのが当然だろ…?それにオレとの接点が持てて。本当は嬉しいんだろ…?」 自信満々に語る桐生を見て俺は呆れ顔で見つめる。 何言ってるんだ、コイツは…。 なんで俺が桐生に消しゴムを貸さねばならんのだ、友達でもないのに…。 自分のを使え!自分のを!! 『アルファ』の桐生とは関わりたくない。 だって俺。イケメン、ムカつくし、大っキライだし…(笑) 「んじゃあ…いいよ。その消しゴム、もういらないから。桐生君にあげるよ」 そう言って会話を潰していく。 そもそも『アルファ』というだけで未だに根強く優遇されている事に嫌気がさしてるんだが、俺は…。 プイッと桐生から目を反らして黙々と黒板に書かれた問題をノートに書き写した。 「ふぅ~ん……アルファに反抗するなんて。変わったベータもいるもんだな…」 授業中なのに桐生のヤツは物珍しそうな顔をして隣に座る俺をじっとガン見している。 オイ!!何、俺を見てんだよ!! さっさと黒板見ろ!! 周囲の生徒もチラチラと興味津々に俺達の様子を伺っていて授業になりやしない。 それにどこからか、俺をバカにする失笑の声も聞こえてくるんだが……。 やめろ、俺を見るな。巻き込むな!! 俺の心はガラスのハートだから、お前らの悪意で粉々に砕け散る。 それくらい、お前らのツラの厚さと違って繊細なんだ、俺は。 心の中で悪態をつきながら、額から冷や汗がタラタラと流れてくる。 くそっ、なんで俺に絡んだんだ、桐生のヤツ。 お前らアルファの邪魔にならないよう、いつもすみっこぐらし、してるじゃねーか!!(泣) 周囲の視線に怯えた俺は緊張からか、ゴクンと喉を鳴らした。 なのに周囲の視線も気付かないのか、ニブイのか……桐生はサラッと嫌みを言ってきた。 「なぁ、お前。その前髪、ウザくないのか?貞子みたいに長過ぎだし。そんで、なんだよ、そのダッセー黒メガネ。オタク全開でヒクわ…」 隣から俺だけに聞こえるような発した罵声にイラッとして。 俺はますます機嫌が悪くなる。 コイツ……ワザとなのか? 空気読め!! 今、授業中なんだぞ! おしゃべりする時間じゃないんだ。 声かけんな、バカ!! 俺は将来を約束されてるお前と違って。 一生懸命勉強して、それなりの会社に就職して平凡な毎日を送っていきたい。 そんな、人畜無害なオメガなんだぞ、俺は!! もういい、無視だ、無視!! キリッと切り替えて無視を決め込んだ俺にイラッとしたのか、授業中だというのに。 桐生にいきなりメガネを取られてしまった。 「その無駄に長い前髪だとメガネかけても黒板の字なんて、どーせ見えないだろ。だからそれ、取れ」 言う前に勝手に取り上げてニヤニヤ笑う桐生にをギッと睨み付けた。 「それ…返して。それがないと見えなくて困るから」 別に見えなくもないが、兄ちゃんがくれたメガネだし、かけてない事がバレたら怒られる。 「そうか……じゃあ、メガネ返して欲しかったらさ、オタク。オレから取り返してみろよ(笑)」 ニヤリと笑う、イケメン悪魔。 メガネを取った所でお前は何がしたいんだ、桐生め……。 さすがにイラッとした俺は手を伸ばして、メガネを取り返そうとした。 それを桐生のヤツが笑いながら素早くメガネを自身の制服のズボンの、よりにもよってポケットの中へと突っ込みやがったのだ。 「アハハ、残念~♪なぁ、オタク君、ほらっ、早く取り返しなよ?」 桐生はクスクス笑いながら黒板に視線を戻した。 ……この最低クズ野郎が…。 怒りがこみ上げてきて、机の下で拳をギュッと握り締める。 これだから、アルファなんて……。 アルファなんて……大大大っ嫌いだ!! 静かに怒る俺に、隣で楽しそうにシャーペンを回して遊んでる桐生。 そんな俺達の様子を見ている、ある二人の視線があった。 その視線に、俺と桐生は気付いていなかった。
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