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戸惑う俺とイケメン桐生との攻防戦。※その2
「一ノ瀬……」
桐生は俺の名前を甘く囁くと。
熱のこもった視線で俺を見つめた。
桐生の体から放たれる香りが宙に舞い、桐生の香りを嗅ぐ度に。
幸せを感じて俺はうっとりトロけてしまう。
桐生は興奮が収まらないのか、俺食らおうと狙いを定めたようにまっすぐな瞳で俺を捕らえる。
そんな桐生の姿を見て。
俺は肩でハァハァと息継ぎをしながら物思いに更けった。
……桐生のヤツもある意味、可哀想だよな…。
突然、俺のヒートに巻き込まれて…。
発情したオメガに求められたら……アルファはヒートから逃げられない。
発情してるから分かるが、この状態で耐え切るなんて、アルファの立場からすれば拷問に等しいに違いないと思う…。
そんな事を考えてると。
ふと、ある事を思い出した俺は桐生にアルファ用の抑制剤あるのか、聞いてみた。
「き、桐生……アルファ用の、抑制剤……持って……る?」
突然の俺からの問いに驚愕したのか、桐生は一瞬、目を見開いたが。
すぐにいつもの上から目線な辛辣な言葉を返してきた。
「薬は持ってない。オレには必要ないからな。オメガのヒートくらい、桐生の人間はある程度慣らしているから効かないぞ。だけど……お前のヒートだけは別だ…」
自慢気に『オメガになんか簡単に堕ちないぜ!!』とカッコ良く宣言している桐生だが……。
そう言いながら、桐生。
お前ってヤツは…。
さっきから俺のおっぱい、ずっと触ってんじゃねーかっ!!(泣)
しかも!!
どさくさ紛れに顔にいっぱいキスすんなっ!!
ドキドキするだろーが!!
心の中では桐生への怒りでいっぱいなのだが、ヒート中なせいか、桐生が触れると俺の身体は喜び、もっと触れて欲しいと懇願する。
自制しろっ、俺ッッ!!
この先は『お尻へGO!!』だぞ!?
俺のお尻だぞ……?
冗談じゃない!!(泣)
し・か・も。
抑制剤がないだとぉ~!?
確か……オメガの人権大事!!な宣言で『アルファ』も毎月『オメガ対策用抑制剤』が国から支給されてるだろーが!!(泣)
『アルファ』は立場上、持ち歩くように!!が必須だろ!!
それに俺のオメガ用の抑制剤はカバンの中だ…。四次元ポケットがない限り、手に入れるのは無理だな…。はい、終~了~!!
詰んだな、俺……。
オーーーマイ、ガァーーーッッ!!(泣)
一度はイッて少し楽になったものの、またすぐに奥が疼いていて。
オメガのヒート状態が戻りつつ、ある。
動揺を隠しきれない俺はあたふたと普段使わない頭をフル回転させ、次の一手を焦りながら考える。
……そうだ。
保健室!!
保健室にならオメガ専用抑制剤がある!!
それを桐生に取ってきて貰えばいいんだ!!
……俺、冴えてる!!
「そ、それなら……提案が、あるっ、保健室に抑制剤、ある、だろ…?あれさえ飲めばっ……………ひぁん!?」
そう言うと、さっきまでの甘い雰囲気から一変して。桐生の背後が寒々しい雰囲気へと変わっていく。
「…………ダメだ。今離れたら危ない、それにオレ以外のアルファになんか、渡さない!」
そう言うと、両手を頭の上に持ち上げられ、桐生に片腕で抑えられてしまった。
「誰にも……渡さない……」
桐生の激しい怒りを目の当たりにして。
驚いてギュッと目をつぶった。
な、なんで、怒るんだよ……。
やっぱりアルファの遺伝子のせいなのか?
オメガの俺に…ヒート中の俺に完全に執着してしまっている。
どうすれば桐生を俺から解放できるのか考えたいけど……ヒート中の俺の身体は欲に素直で。
なんだかんだ、この状態に心地よさを感じてしまっている。
桐生の左手がガチャガチャと音をたてながら、もどかしそうに俺のズボンからベルトを引き抜くと。
そのベルトを使って俺の両手に縛りつける。
「一ノ瀬は………オレの事、キライか…?オレに触れられるも嫌なのか……?」
「………………」
いつもの強気な桐生と違い、俺を見下ろしている桐生は酷く傷ついたような、悲しい瞳をしていて。
なぜか胸がズキッと痛んだ。
イケメンがそんな顔、すんなよ。
まるで俺が悪者みたいじゃないか……。
ズキズキと胸が痛むのは、きっとオメガのヒートせいだ。
オメガの遺伝子が……アルファを拒む俺に怒っているのだろう。
でも。
お、俺………絶対に無理だ。
桐生をキライだとか、そんなの以前に。
俺は経験がない。
そう、未経験。
恋愛経験値ゼロの俺が。
いきなり……せ、せ、セックス……。
こりゃ無理だろぉぉ!!
それに、アルファの桐生は経験豊富だから対した事はないかも知れないが……。
俺は一度に色んなモノを失くすじゃないか!!
バース検査した後にオメガだと分かって、すぐにセックス心得の講習をしたが。
男同士の場合、お、お尻でします…って……。
………イヤだ。
そんな場所に入んない。
痛そうだし、気持ち良くなんかないだろ…。
更に無理矢理挿入した場合、ヒドイと中で出血します、だなんて。
そんなの無理だ。痛いのヤダ……(泣)
「……嫌いとか、そんなんもんじゃない。…お、俺、その……まだ誰とも……シた事 ない…し。それに…痛いの、怖いし……」
顔を真っ赤にしながら桐生に話しかけると。
桐生は嬉しそうにニヤッと笑った。
「そ、それに、桐生なら……もっと可愛くてキレイな男や女のオメガやアルファだって付き合えるんだし。俺じゃなくても…」
「イヤだ。お前としたい」
「………ううっ…生々しい事言うなよぉ~。俺、オタクだし、貞子だし……桐生の好みじゃないだろ?俺とは後悔するだけだぞっ」
「いや、今しない方が後悔する」
生々しい会話にブレる事なく、ことごとく俺の提案を潰しながらキラキラした瞳で俺を見つめる桐生に恥ずかしさから目を反らして、諦めるように俺は説得を続けた。
「お、俺、本当に初めてだから、、きっと慣れてる桐生には、色々と良くないハズだ!!だからっ……」
「そっか。初めてか。……じゃあ恵の全部、オレのモノになるな」
「だ、だからぁ、俺は…」
「オレは恵としたい。痛いのが怖いなら出来る限り優しくする。それでもダメか…?」
うっ。
な、な、なんだよ。
そのとろけ顔……。
イケメンが欲情した顔なんか見せんな!!
胸がキュンキュンしちゃったじゃないか!!
あと、いつの間にか『めぐみ』って名前で呼ぶな!!
女の子みたいで恥ずかしいし、俺には似合ってない、貞子で十分だ!!
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