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憤怒の猿と狼に怯える暴食の小リス
ライオンは勉強会に参加しようと、いつもの広場にやってきました。しかし、どうも昨日と様子が違うようです。
「ウサギと小リスはどうした」
フクロウがほう!と答えました。
「ウサギは恋の約束、小リスはどんぐり集めにて欠席と、連絡を受けています。」
それはおかしいなと思っていると、コウモリがやってきました。
「あっはっは!そいつはただの口実さ。ウサギも子リスも、アイツと顔を会わせたくないのさ!」
「ふん!相変わらずの笑い上戸だなぁ?コウモリよ。」
草むらから姿を表したのは鋭い目つきの狼です。狼は唸るような低い声で言いました。
「人間が言うところの七つの大罪を勉強しているんだって?そんな面白そうなことをやっているなら、早く俺様を呼べってんだ」
続いて狼はフクロウを睨みつけるようにして言いました。
「ふん!七つの大罪の残りは、愛と貪食だろうなぁ。貪食なんかだぁれも幸せにならないし、愛というのは罪と憎悪ををよぶものさ。」
カラスがバサバサっと羽音をたててやってきました。
カラスは狼の方を向いて片羽を前に出して頭を下げました。それを見て、狼はやはり低い声で唸るように言いました。
「ふん!残りのひとつはカミサマ気取りだ。カミサマ気取りというのは集団にとって、有害だ。」
森の木々がザワザワと揺れました。
少し離れたところで、猿の群れがこちらに目を光らせています。もし狼がほんの少し顎を向けて合図をすれば、猿の集団がこちらに襲いかかることでしょう。
狼は木の上のカラスを見ながら言いました。
「それとも弱者か?弱い奴ってのはすぐに裏切る。力なき者の政治は不信を生むだけだ」
角度としては見上げているはずなのに、見下しているようにしか見えないから不思議です。
広場に生温い風が吹きました。木の葉がこの場から逃れるように散っていきます。カラスが重い口を開きました。
「一つは、社会的不公正です。」
誰も何も言わなかったので、カラスは言葉を続けました。
「公正であるとは、即ち正義であること。社会とは集団を指します。つまり、人が集団を結成するとき、必ず正義を内包せよという理念にございます」
狼はお気に入りのしゃれこうべを前足で転がしながら言いました。
「上に立つ者には責任が伴うということだな。肝に銘じておくよ、カミサマ」
そう言って狼が去ったので、皆、胸を撫で下ろしました。力のある者と接するときは誰でも緊張してしまうものです。
「行ったかい?」
木の穴からか細い声が聞こえて来ました。
「行ったとも!どうぞ出ておいで」
コウモリがそう言うと、かわいい子リスが2匹出て来ました。
小リスは涙をためて言いました。
「狼がもっている、あの頭蓋骨」
「あれは僕らの父さんのものなんだ」
「僕らは、父さんが病気なのを知っていて」
「でもどんぐり拾いに夢中になって」
「家にちっとも帰らなかった」
「知らぬ間に父さんは亡くなっていて」
「狼が罰だと言って、持っていった」
小リスは2匹、抱き合って泣きました。
「返してくれと言ってみたけど」
「猿たちはわけのわからない謎ときを出すばかり」
「狼は見せしめのように父さんの頭を足で転がしている」
「あれは社会的不公平ではないのかい」
フクロウは頭を抱えました。フクロウも頭蓋骨を小リスに返すように掛け合ったのですが、狼は相手にしてくれなかったのです。
小リスが縋るように言いました。
「カラスさん!どうか君の知恵で、僕らの父さんを取り返しておくれよ!」
カラスはアホー!と鳴きました。
「阿呆の小リスめ!もとはといえば、お前らが仲間の忠告も聞かねえでドングリばかり拾っているからこうなったんだろうが!あの狼の野郎はお前らが反省しているのか試してやがるのさ。なんせ、あいつは正義を重んじる野郎だからな。お前らがその、食欲というものの罪深さを心から反省して父親に詫びたならば、あいつはあれを手放すだろうよ」
ライオンは小リスが出て来た巣穴を見ながら言いました。
「お前らは食べ物のことになると、目の色が変わることがある。あんなにたくさん、いらないだろう?」
2匹の小リスは気まずい顔をして、フクロウを見ました。フクロウはカラスを見ました。
「阿呆の小リスめ。いつでも尻をぬぐってくれる誰かがいるという考えはよしたまえよ。お前の代わりにフクロウが行ったのも、狼の逆鱗に触れたことだろうぜ」
コウモリが言いました。
「あっはっは!次に生かさないと反省しているとは言えないなあ!俺の育児なんて、反省の毎日だよ!」
みんなそれぞれに行きたいところに行ったので、今日の勉強会はこれでおしまいになりました。
最後に残ったのはカラスとライオンでした。
「俺はカミサマ気取りなのかねえ」
「狼は、自由にどこへでも飛んで行くお前が羨ましいのさ。猿の集団を率いるってのは並大抵のことじゃあないからな」
「ふうん、じゃあ愛が罪かどうかについて、お前はどう考える」
ライオンが何か言おうとして木の上を見ると、カラスはもう、どこかへ飛んで行ったあとでした。
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