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クマの怠惰と大蛇の嫉妬
次の日、広場には珍しくクマと大蛇が来ていました。
大蛇はクネクネと身をよじらせながら言いました。
「愛とカミサマ気取りが七つの大罪なんだって?」
クマも寝転がって頬杖をついた体勢で言いました。
「こりゃあ面白い。是非ともカラスの話を聞いてみたい」
ライオンは少し気まずくなりました。だって、カラスの話ぶりでは、おそらく、愛とカミサマ気取りは七つの大罪ではないからです。ライオンは木の上を見ました。コウモリは来ないようです。育児が忙しいのかもしれません。
フクロウがやって来ました。
「それにしても、クマや大蛇も出てくるとは、珍しいこともありますなあ」
フクロウはグルっと顔だけまわして、あたりを見渡しました。
「ほう!小リスが2匹に、ライオンにウサギ、キツネ、それにクマに大蛇。なかなか面白い組み合わせです」
バサバサっと黒い羽音がしてカラスがやって来たので、大蛇はさっそく、声をかけました。
「愛とカミサマ気取りが七つの大罪になったんだって?」
クマも言いました。
「じゃあなんだ、人間はカラスを絶滅させようと躍起になっているのか。それでお前は助けを求めに森に来たと…」
カラスは心底、嫌そうな顔をして言いました。
「オレはこれでも人間とは上手くやっているつもりだ。」
クマはまたあくびをしました。
「なんだつまらん」
大蛇が首を高くしました。
「カラスがもったいぶるから変な尾ひれがつくんだぞ。全部言ってスッキリしちまいなよ」
カラスはカーと鳴きました。
「七つの大罪の残り二つは、環境汚染と麻薬中毒だ」
ウサギとキツネは顔を見合わせて言いました。
「なんだ、普通だったな。」
「あぁ、普通だ。」
それで、みんなが帰り支度をはじめたとき、必死に小リスが言いました。
「ちょっとまってくれよ!あぁ、ここに、面倒くさがりのクマまできたのは、本当に運命だ。ぼくの話を聞いておくれよ!」
小リスは、狼のもつしゃれこうべについて、一生懸命説明しました。
バサバサっとカラスが飛び立つ音が聞こえました。
「小リスよ、お前は狼に言いにいくべきだぞ」
クマは寝転がったままで、あくびをしながら言いました。
「でも!怖いんだ!」
「狼も猿も怖い!」
クマは座って、またあくびをしました。
「怖いからやらない。それもまた怠けであり、堕落だ」
「ひどい!」
「あんまりだ!」
「おまえらさ、被害者ぶるのもいい加減にしろよ。」
クマが地に響くような低い声で言ったので、小リスは黙りました。
「ライオンよ。お前は小リスにこのことについて、何か頼まれたか?」
ライオンは首を横に振りました。
クマは言いました。
「頼まれてもいない問題に、あれこれ首を突っ込むのは傲慢というものだ。」
小リスの兄弟がクマを睨みつけるように言いました
「じゃあ、もしぼくたちが頼んだら」
「熊やライオンが手を貸してくれるっていうのかよ」
クマは立ち上がって手を鳴らしながら言いました。
「当然だ」
ライオンもツメを研ぐそぶりをしました。
「手を貸そう。狼のねぐらへ行こうじゃないか」
震えて声もでない小リスに対して、キツネは首をかしげました。
「何を遠慮することがある?願ってもないチャンスじゃないか」
ウサギが囁くように言いました。
「愛は差し出されたときに受け取るべきだぞ」
大蛇も身をくねらせました。
「お前達は十分に耐えた。扉は開かれたのだ」
フクロウは大げさに、羽をひろげてみせました。
「こんなときくらい、傲慢にならなくてどうします?」
小リスの兄弟はお互いを見つめて、喉をならしました。
「覚悟ができた。みんな、ついて来てくれ」
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