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鬼の棲む島
「いよいよだ」
晴れた夏空の下、舟を漕いでいた角前髪に桃印の鉢巻を締めた少年は、白桃じみた端正な紅顔の汗を拭いつつ、切れ長い目に緊張を走らせて行く手を見やった。
「お前たちも覚悟は良いか」
まだ十四歳の少年は変わりかけの割れた声で語りかける。
船の舳先には雉が止まり、少年の傍らには小猿と犬が侍っていた。
「皆で、鬼ヶ島から生きて帰るのだ」
行く手には青々とした緑の繁る島山が待ち構えている。
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