第九話

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第九話

第九話:覚醒①  シャナオウとネロによる先の戦闘により、シャナオウの名声は上がっていた。  それに伴いシャナオウ常勝軍に反ガロア帝国の意思を持った多くの人々が集まり、シャナオウ常勝軍は植民地を含めてガロア帝国領土の約20%を解放するに至っていた。  その間にも、シャナオウと聖剣アメノムラクモとの融合率が向上し、以前とは比較にならない程の戦闘能力を身に付けるに到った。  そんな中、シャナオウとネロは再び剣を交えることとなる。  シャナオウと同様に戦闘能力を向上させていたネロであるが、戦いの末、シャナオウに敗れる。 このことが原因となり、ネロの精神はさらに歪み始める。ネロは、世界の破滅を心から望むようになっていった。  グングニル皇国壊滅後、その領土は国のない無法地帯と化していた。月読命の傍らで吟遊詩人の見習いとして各地を転々としていたシグルドであったが、立ち寄った街で盗賊武装集団に襲われたのであった。 また、シグルドの前で惨劇が繰り広げられようとしていた。 月読命: 「盗賊武装集団だね。 彼らも生きるのに必死だから、抵抗するものは簡単に殺すよ。 君は、聖剣の所持者だから肉体のその再生力により、そう簡単にはやられないとは思うけど、周りの人々は普通の人々だから、簡単に命を落とすことになるよ。 シグルド、ここで私が盗賊を相手にすれば、それでこの場は解決するかもしれない。 でも、この世界の問題は、この世界で生きている住人自体が解決しなければいけないんだ。 この場合もそうだよ。 怖いのもわかるし辛いのもわかる。 でも、自分が守りたいものは自分で守るしかないんだよ。」  そういわれて、シグルドは初めてノートゥングを手にして戦う決心を持った。  シグルドは辛くも勝利を収めるが、このことはすぐにガロア帝国に伝わり、以後ガロア帝国から常に狙われる存在となってしまった。 その日の夕暮れ、シグルドは初めて自分の運命と向き合う決心を持った。 シグルド: 「ねぇ、聖剣の肉体って何なの?」 月読命: 「聖剣は、鍵なんだよ。その鍵を専属で使用するために、永遠に近い時間を与えられた肉体なんだよ。 でも、それに宿った魂は鍵の触媒となるため、無理な融合では数ヶ月から数年で消失し、正統な封印解除の場合でも約200年で魂は消失するんだ。 その際には再び封印状態になるか、それとも選ばれた新たなる魂によって活動するんだ。」 シグルド: 「・・・何の鍵なの?」 月読命: 「神々の時代の終盤に、ヒトが“無”に対抗するために作り出した、3体の甲冑を着たヒト型最終兵器を起動させるための鍵さ。 その鎧の一片一片、生態部分の細胞一つ一つに、戦いで死んでいった神々の魂を封入した存在で、3つのレクイエムと総称されているんだ。 今はこの星の地底深くに封印されているんだ。 それぞれの名前は、ラクリモサ・キリエ・リベラメで、ラクリモサの鍵はノートゥング、キリエの鍵はエクスカリバー、リベラメの鍵はアメノムラクモとなっている。  神々の魂が封印されていることもあり、鍵の封印を解除しているものが、さらにそれぞれの最終兵器の封印を解いた際には、その鍵と専属の肉体とそれに宿った魂は、最終兵器の一部となり、魂は永遠の存在となるんだ。  最終兵器は、文字通り最強の神力を誇り、その破壊力は一撃で『フラスコ』と呼ばれる壁を損傷するだけの威力を持っているんだ。それ故に、当時より極めて危険な兵器として扱われていたんだ。」 シグルド: 「つまり、聖剣も、最終兵器も、本来は唯一意識を持った“無”である、あなたに抵抗するために建造されていたということ?」 月読命: 「・・・・そういうこと。 でも、その後、それは違う意味を持つようになったんだ。 これは、ウルと私ぐらいしか知らないことなんだけど、いずれ、君が選ばれたものであるならば、それと対峙することになるよ。 今はこれ以上は言えない。」  時を同じくして、ガロア帝国の旧遺伝子研究所近くのエネルギー変換施設がシャナオウ常勝軍の攻撃により破壊された。  それに伴い、人知れず旧遺伝子研究所内に仮死状態で保管されていた者が、仮死凍眠カプセルの電源が切れたことにより、その長い眠りから目覚めた。  その者の名はランスロット。見た目は10代半ばの女性である。彼女は、遺伝子研究所において、人間族・ホビット族・竜族・エルフ族の遺伝子を持ちつつ、唯一魂を持たせるに成功した存在である。  彼女は、各地を転々とした後にシャナオウと出会い、彼とともに行動を共にすることとなる。  彼女がシャナオウ常勝軍にその身をおいてからは、その卓越した剣術と魔法による戦果により、最強の魔法剣士と呼ばれることになる。
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