君の歌を歌う

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「最後の曲です、、この曲は、僕の大切な、大切な人の、いや、大切だった人との、思い出の歌です、聞いてください、、、」 「君の歌を歌う」 ギターを背負い人通りの多い路地に入っていく、 雪が降り積もり世間は、すっかりクリスマスモード俺は自転車を漕いで空を仰いだ 「はぁー、全然人来えへんかったなー」 路上ライブを初めて2ヶ月がたった 初めのうちは人が多かったが だんだん少なくなっていき 今では常連は5人だ 「新しい曲作ろっかなぁ」 俺は家に帰って机に向かいメトロノームを鳴らす 「明るめの曲やからーBPMをー…」 とりあえずギターを弾いて思いついたフレーズを並べていった 「どうしよ…思いつかん…もっかいそこら辺で弾いて来るか」 俺はギターをもち、近所の公園に立ち寄った 「ギター上手なんですね」 「え?」 ギターを弾いていると いきなり背後から声が聞こえた 振り返って声の主を確認すると 俺と同じぐらいの歳で、 サラサラの黒ショート 赤のチェック柄のマフラー、 紺色のロングコートに制服を来ている 可愛らしい女性が立っていた 「歌は歌えるんですか?」 「え?、まぁ出来ますけど」 「歌ってみてください!!」 「…わかりました、じゃあーー」 「以上です!」 「…凄い素敵な歌ですね…!」 「ありがとうございます」 「あ、あの!もう少しいいですか??」 「別にいいですけど、」 「あの、今まで曲聴いてて思ったんですけど恋愛ソングとかは歌わないんですか?」 恋愛ソングか、考えたこと無かった そう言われてみればほとんど前向きな曲ばっか歌っていた、でも、、、 「恋愛ソングなー、ガチの恋愛したことないからわからへんねんなー」 「ええー!もったいない!楽しいですよ!恋って!てことは…失恋は!?」 「失恋もしたことないねん、本気で人を好きになったことないねん」 「えー!もっと人生enjoyしなくちゃ!」 「そうかー?めっちゃ楽しいけどなー今」 俺は彼女と一緒に色んな話をした ギターの話や、好きなコード進行の話 好きな食べ物、音楽、アーティスト 驚くほど趣味があったそんな話をしていると いつの間にか20時00分になっていた 「てか、もうこんな時間!帰らなきゃ、あの、連絡先」 「連絡先教えてよ」 「…っ!はい!!」 気がつけば俺は彼女に連絡先を聞いていた 彼女と出会って4ヶ月たった 彼女と出会って過ごして なにか今まで感じたことの無い 不思議な気持ちが芽生えていた 彼女とすごしたお正月、 大晦日 気がつけば俺は彼女なしの生活を考えられなくなっていた 「なぁ、」 「んー?どうしたん?」 「例えばさ、その人とおると心臓がバクバクしたり、目が合うと恥ずかしいけど嬉しかったりその人のこと目で追ってたりするのって一体なんなん?」 「それ好きってことやろー?なに?好きな人出来たん?」 好き、これが、恋、なのか… じゃあその相手って…まさか 「うん」 「え…誰…?」 ゆってええんかな 「お前」 「え?、ええ??!」 彼女は目を点にさせて、しばらくして言葉の意味を理解したのか顔を真っ赤にしすぐ下を向き、顔を隠した 「好きやねん、付き合ってくれる?」 「…、はい!」 「ありがとう、これからもよろしくな?」 彼女は、顔を伏せ隠してすすり泣いていた 髪にかかった桜の花びらが風になびかれ飛んで行った 4ヶ月たった8月俺達は海水浴旅行に出かけた 「お待たせー、水着着替えんのめっちゃ時間かかったー」 「大丈夫や、、で…」 夏にピッタリの水色の花の柄が書かれた水着 俺の視線は彼女に釘付けになっていた 「え、もしかしてなんの色が好きか聞いたのって…」 「えへへ、バレちゃった、どお?似合う??」 「うん、…めっちゃ可愛い」 「っ!ありがとー、恥ずかしいなぁ」 久々に子供みたいにはしゃいだ 子供のようにはしゃいでいる彼女を見て僕は一層惚れてしまった 「楽しかったねぇー」 車に乗り込みホテルまでの道のりを車で走っていく 「あのさ、これからもずっとこうしたい」 「え?」 「俺やっぱお前のことめっちゃ好きや、これからもずっと一緒におろ」 「うん」 「好きやで、愛してる、ほんまに好き」 「うんっ」 「大好き、愛してる」 「うん…もう言わんといて」 「いつまでも一緒やで?」 夕日に照らされたせいか、彼女の顔は火照っていて、涙を流し、私もあなたのこと愛してる と囁いていた ホテルについて風呂に入り晩御飯を食べていた、お酒も入っていたからか盛り上がっていた そのせいか、お互いの好きなとこを言い合うゲームをしようとなった 「俺な、お前ってさいつもは大人しいのに、急に子供みたいになったり、何事にもポジティブな、とこあるやんそーゆーとこ好きやねん」 「私はねー夢に向かって誰よりも頑張って、頑張ってる君が1番好き、」 「優しくて物知りで、子供っぽくて一生懸命で、さ、すごいかっこいいと思う」 「お前…」 「…好きだよ」 気がついたら俺は彼女を押し倒していた 「っ!…」 熱い口付けの後 細い首にキスを落とし、 服の中に手を滑らせた 「嫌になったら言ってな」 「…嫌なわけないやんか…好きやもん…、いいよ…?」 俺は彼女を大切にしようと改めて誓った 「…曲作りたい」 机に向かいペンを動かした 「…やっぱ思い浮かばんなぁ、せや、彼女のこと考えて書いてみよ」 すげぇ、ええの出来た 今まで1度も作ったことがなかった恋愛ソング 驚くほどフレーズが思い浮かんだ 「サビの最後どうしよっかなぁ……」 せや、彼女と約束したこと描こ 「いつまでも一緒だよ…これにしよ」 俺はただひたすらにペンで書き連ねた その三ヶ月後の11月のことだった俺はいつものように路上ライブに出かけた 「じゃあ、いってきまーす」 「いってらー」 「よし着いた」 「彼女にクリスマスに送る曲練習しよ何気この曲やんの初めてかもしれんな えーと、楽譜はーあった!」 俺は周りのことは気にせずに歌を歌った、 目を閉じて自分の世界に入っていった 曲が終わりあたりを見てみると 人だかりが出来ていた 拍手の喝采が鳴り響いていたのだ 「いつの間にこんなに…」 そこに、スーツを着た男の人が列に割り込んできた 「ねぇ、君、君って芸能界、興味ない?」 「芸能界ですか、興味ありますけど」 当然だ、歌手になりたくて歌ってるんだから 「なら良かった!あ、私こういう事務所のものですけど」 名刺らしきものを受け取り目を通すと驚くべきことが書いてあった 「うそや、ここ、めっちゃでかい音楽事務所…」 「もしよろしければ来ませんか?」 …彼女に連絡しなきゃ 「あのな、でかい音楽事務所あるやん、、あそこからオファー来てん…」 「え!!凄い!!夢叶ったじゃん!!!」 「やったぁ!」 「おめでとう!!」 「うちもさ、夢やった仕事の話かなうかもやねん!!!」 最初はそう呑気に考えていた 事務所に入って最初は人が集まったがだんだん減っていった クリスマスの前の事だった 「また人少ななっててん…」 「………」 「このままじゃ事務所追い出されるー、1回でええねん、人が一気にくるにはどうしたらええんやろぉ、、」 「……別れる」 「え?」 「わかれよ、私たち」 「なに言うてんの?」 「別れよう」 「意味わからん…は?いつまでも一緒って言うたやんか!!理由説明して!!」 「あなたのことなんか好きじゃない!!」 「…は?」 「最初から…好きじゃなかった…!」 「え、、、え?」 「さよなら、一緒にいれて良かった」 彼女は玄関に向かって走っていった俺は、追いかけることも出来なかった、 ふと、とある楽譜が目に入った 「…あ、、これ、どうしよ、、あいつの歌…」 俺は無意識にギターを持っていた、 「ほんまは彼女に歌うはずやったのにな…」 声に出して歌った何回も何回も 甘いもの好きの彼女にとって ちょうどいい甘さの歌 風邪気味の声が枯れても歌い続けた 何度も何度も… でもとある箇所で詰まって 涙が止まらなくなった 「…いつまでも一緒だよのとこ、…さようならに変えなな…」 色あせたギターのげんを弾く ギターは上手く響かなかった 俺の心を表しているかのように 綺麗に響かず、鈍くなった 「やっぱ、歌われへん…歌われへんよ、、歌えるわけないやんか!!」 さようならを結局「いつまでも一緒だよ」 に戻した、、、 クッションの下の紙に、手が当たった 紙がはさんであった 「ごめん」 気がつけば俺は外へ走っていった 「どこおるん!なあ!」 色んな場所を探し回った 遊園地、海、交差点思い当たる場所を、探し回ったでもどこにもいなかった 「どこおんねん!」 いってない場所、いってない場所… せや、、いってない場所あるやんか 「あの公園、初めてであった、思い出の公園」 俺は公園へ向かって走っていった 「はぁ、はぁ、、おった!!」 「…」 俺は彼女の手を繋いだ 「あの、俺!やっぱ忘れられへん、好きやねん!!」 「もう別れようって行ったじゃん!!なんで来るの!!」 「なんでか説明してや、してくれなわからんよ、俺の事嫌いとか、嘘つくなや!お前が苦しいだけやんか!!」 「〜っ、海外の、外科の、仕事受かって、、、日本に戻れなかもしれないの、、、その国が、紛争地域で、帰ってこれるかどうか分からない…」 彼女は手を振りほどいて走っていった 「さようなら、大好きだった」 「待つよ!!待つから…いつまでも待つから、、だから、戻ってきて!!お願い!絶対生きて帰ってきて!!愛してるから!!」 「〜ぅ、」 彼女は泣いていた 泣き顔を隠しながら走り去って言った 俺から離れていった、 行き場のなくなった手を 繋いだ手の温もりが残ったまま ポケットに突っ込んだ 後日彼女が紛争に巻き込まれたことを知った 悲しくて辛くて苦しくて 一日中泣いた一日中叫んだ そんな俺を見越して医者は 彼女の手紙を俺に渡した 俺宛の手紙、彼女との最後の思い出 「…天から見守ってます、前を向いて? 私とあなたは離れ離れになんかならない、 さようなら、いつまでも一緒だよ」 馬鹿だ、俺 なんでいつまでも泣いてんだ? 彼女が前を向けって言ってるんだ… 前見ないでどうすんだよ 彼女の最後の願い聞かなくてどうすんだよ …前を見なきゃ前を見なきゃ! 大丈夫、大丈夫、 楽譜を「いつまでも一緒だよ」から 「さようなら」に書き換えた、 これは彼女との思い出の曲 決別の歌、そう心に誓った 「ーーーーさようなら♪」 ライブの最中いつの間にか雪が積もっていた 初雪の綺麗な粉雪は、 まるで、彼女のように優しく、俺の肌に溶けていった
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