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確かに丸みを帯びたデザインは似ている……というよりセレスは古代ギリシャ語で“セリカの~”という意味だから、明らかに意識して設計したのだと思うけれど、大きさは乗用車よりずっと大きい。高次航行を備えた星間宇宙船としては小型な部類だけど。
「小さいですが、杉野グループが製造している中で2番目に速い船です。とりあえず乗って下さい」
セレスの後部に回った私は搭乗ハッチを開けて一直線に操縦室へと登り、コンソールパネルに挿したキーを回す。
「ハッチは閉めましたか?」
「ああ!」
イグニッションスイッチを押してエンジンをかけると予備点火の音と共に船体が少し震えた。
「こちらV1A-JS。管制塔へ、94番格納庫より離陸許可を求めます」
耳にヘッドセットを着けて髪をまとめ、管制塔と交信しながら滑走路へと出る。田嶋さんは隣の席に座った。
『V1A-JS、こちら管制塔。位置を確認した。3番滑走路へ向かえ』
「了解しました。シートベルトを締めてください。すぐ離陸します」
「ところで、宇宙に上がってからどうするつもり?何か手はあるんだよな?」
エンジェルさんが後ろの席から声をかけてくる。
「今考えてます」
「考えてる?今?」
3番滑走路へ向かいつつ、今後の手を考える。追い掛けて停船を呼び掛けて女の子を解放してくれるなら良いけれど、地元警察を振り切っている連中がそんな事で諦めるはずは無いし……。
「俺も考えてる」
田嶋さんもまだ思い付いていないみたいね……。
「マジかよ……」
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