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「離陸可能速度に到達。離陸します」
操縦桿を引くと今度はGが下に掛かり、すぐ後にタイヤが拾っていた滑走路の凹凸の振動が消える。速度も十分に出ているし、飛行には不要な車輪を格納する。
「田嶋さん、ナビゲーションシステムでVTOL機を探してもらえます……あ、視認ました。大丈夫です」
私は雲間を抜けてセレスの船首をVTOL機が飛び去った方角へ向けると、すぐにその機影を見つける事が出来た。
「それで、これからどうするんだ?早くしないと高次航行高度まで出ちまうぞ!?」
「いえ、あのVTOL機は大きかったですけれど、高次航行エンジンは付いていませんでした。恐らく惑星内の別の地域へ向かうか……」
「大気圏外で別の船に拾ッてもらうか……だな?」
田嶋さんはそう言ってナビゲーションシステムを指し示す。そこにはVTOL機の軌道と重なる軌道を取っている大型船の機影が映っていた。あれなら高次航行で別の銀河系にも行けるはず……。
「先にあの船の方へ行きましょう。こちらの方が速度は速いはずです」
私はセレスの軌道を大型船へ向ける。大気圏内での軌道修正は感覚的でやりやすい。私は操縦桿のフィードバックで風を感じながらセレスの船首を持ち上げ、急角度で上昇する。
大気圏を抜けて宇宙船を肉眼で捉えるとそれは鎖のようなものが見えてきた。多分貨物運搬用の宇宙船で、大量のコンテナをまとめたビルデングのように巨大なカーゴキャリアを列車のように連ねているんだわ。もしかしたらあの船自体は事件とは無関係で、誘拐犯はあの船のカーゴキャリアに紛れて逃走するつもりなのかも……。
「もしかしたら、誘拐犯とコンテナ船は無関係かも知れませんね」
「そうじゃ無ェかも知れねェがな……」
「どっちにしろ、今は解らないだろ?どうする?」
「無線で呼掛けましょう。協力を要請して……」
無線機に手を伸ばそうとすると、田嶋さんに制止される。
「いいや、勝手に立ち寄らせてもらおう。名乗ッてから乗り込むのはマズい」
「でも……」
「これは元々俺達の仕事だ。お前ェさんの腕は知ッてるが、ヤり方はこッちで決めさせてもらうぜ」
何か事情があるのかしら……?
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