プロローグ

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「……解りました」 「とりあえず乗り込め」 「こっそりと?」 「そうだ」 「それじゃあメインパワーを切りますよ?」  私は田嶋さんに言われた通りセレスを貨物船に向かわせ、エンジンを切って慣性航行に移る。これで少なくとも貨物船の側から有視界の探知は避けられる。けれどこっちもセンサーを切っている状態だから、一歩間違えれば貨物船に近付き過ぎて衝突しかねない。広大な宇宙の中、大きさも正確には解らない貨物船に視覚情報だけでギリギリまで接近する事になるわけだから……。  既にカーゴキャリアが風防の前を覆いつくす程にまで接近した。後ろの席からエンジェルさんが不安そうに声を掛けてくる。 「なぁ、そろそろ減速するべきじゃないか?」 「いいえ、あと19.6秒待ちます」  更にカーゴキャリアに近付き、ゆっくりに見えていた貨物船が物凄い速度で目の前を横切ろうとしているのを実感する。 「なぁ、もう……」 「エンジン始動、着艦まであと5秒」 「えっ!?」  逆噴射ではなく方向転換の姿勢制御を行い、車輪を出してコンテナの隙間にセレスを着艦させた。
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