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「着きましたよ。エンジェルさんはこの船をお願いしますね」
シートベルトを外すと無重力状態のため、座席の緩衝材の反発力で何もしていなくても身体が浮き上がる。
「え、何で俺が?」
「宇宙服が合わないと思います。女性用なので……」
身体を捻ってエンジェルさんと話しながらそのまま座席の上を通り、出入り口のハッチの方へ向かう。
「でも田嶋も……」
「田嶋さんは小柄ですから何とかなるでしょう」
「そういう事ッた」
「っ……じゃあ、お待ちしていますよ!」
エンジェルさんはそう言って席に戻った。
「無線の周波数はチャンネル4、予備に5を使いましょう」
「了解」
私と田嶋さんは操縦室から出てエアロックを掛けると、宇宙服を荷室のロッカーから出して私だけバスルームへ向かった。一応ここもロックが掛かるからね。
宇宙服は、従来はスーツ内を与圧して密閉するタイプばかりだったけれど、あれはスーツ内の圧力のせいで動きづらく、現在はウェットスーツみたいな見た目のスーツが主流。細胞の皮膜を模した溶液n3Sを密閉されたスーツ内に満たすことで真空状態でも脱水状態にならず、酸素マスクをしていれば長時間の生存が可能になるという仕組み。身体が濡れるからちょっと普通の服の感覚とまではいかないけれど、それでも従来の与圧式の宇宙服に比べればかなり快適になったらしい。
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