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ハッチを開けると田嶋さんがベントの中へ入り、私も続いてベントの中に身を潜らる。こういう狭い場所は地上でも這っていく事になるから体勢的には変わらないのだけれど、やはり無重力だと楽ね。
「下から覗くなよ?」
「それ男性の言う台詞ですか?」
「服は女もンだからよ。それに今の発言、男女差別だぜ?お前ェさんは俺とは違ッて性差別には反対だと思ッたがな……」
「からかわないで下さい。今のはそういう意味ではなく……」
「おッと、からかッてるのがバレたか?」
「貴方から教わったのは戦闘技術だけじゃありませんからね」
「俺が教えたのは戦闘に関してだけのつもりだッたンだがな?」
「色々学ばせてもらいましたよ?年上の男性との(仕事上での)付き合い方とか……」
「今、省略した台詞が聞こえた気がすンな……ッと、そろそろここから出よう。多分この辺でブリッジ近くの通路に出られるはずだ」
田嶋さんはそう言ってベントから出ると、通路を警戒する。その時、船内放送が響き渡った。
『船長より全船員に伝達。冷凍睡眠に入っていない全船員は第2デッキ休憩室に集合せよ。繰り返す、全船員は第2デッキに集合せよ』
「乗っ取られたのかしら?」
「或いは抗戦中か……いや、静か過ぎるから無ェな。やッぱ降伏したンだろう」
田嶋さんがそう言うと、エンジェルさんが通信に割り込んできた。
『何だって?』
予想されていた事ではあるけれど事態が悪化した事に変わりはないから、エンジェルさんも口を挟まずにいられなかったみたい。
「恐らく船が連中に乗ッ取られた。送れ」
『マジかよ……どうすんだ?』
「まずは人質の安全を確保しましょう。それから船を奪還します」
「いや、同時に進めよう。俺はブリッジを確保する。愛、お前ェは人質の安全を確保しろ」
二手に分かれるのが怖い訳では無いけれど、人数的に不利な状況で分かれる事を田嶋さんが指示するなんて珍しいわね。
「片方ずつ解決してたら連中が防備を固めちまうからな。速攻で行くぞ」
「そうですね……解りました」
田嶋さんと別れようとすると、呼び止められた。
「ちゃンとやれるよな?」
「ええ、師匠が良かったですから」
「“良かった”?最高だろ?少なくともお前ェは最高の弟子だぜ?」
何でかしら?こんな事言うような人じゃ無いと思っていたけれど……認められた……のかな?
田嶋さんは宇宙服のバイザーの下で冗談めかしたような笑みを浮かべると振り返り、ブリッジへ向かった。私はそんな田嶋さんを半笑いのまま見送ったけれど、どういう表情をすれば良かったのだろう?
何はともあれ女の子と船員の安全を確保しなくちゃ……。
通路を進んで第2デッキの休憩室へ向かうと複数の人の話し声が聞こえてきて、船員達が集まりだしている気配を感じた。
恐らく休憩室に全ての船員を集めて閉じ込めようとするはず……それなら、連中が待ち伏せているのはその手前の……。
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