プロローグ

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「緊急事態につきこの回線に直接通報させて頂きました。現在オペラハウスの爆発現場からシルカ通りを西へ逃走する車両を追跡中。逃走直前に10代の少女を攫っています。容疑者の車両は紺色のトールワゴン、車種はメルセデスのバネオ。ナンバーはµκ5513です。私達の車はシルバーのMG/ZT.」 『通報感謝しますツカモト・アイ。5ユニットを追跡に回します』  私達の車がワゴン車に追い付いて隣に並ぶとワゴン車の後席の窓が開き、自動小銃の銃身が突き出された。 「ブレーキ!!」  運転手がブレーキを踏んだ直後、銃弾がフロントガラスの前を横切り、通りに面したシャッターに弾痕を開ける。続けてAピラーにも銃弾が命中して火花を散らし、フロントガラスに細かいヒビが入って前方の視界が塞がる。  私は運転手の左肩に手を回して右に引き倒すと、直後に運転席の背もたれに弾痕が幾つか開いて車内にシート内のスポンジが飛び散る。私達が乗っている車もスピンして停まった。 「……あ、ありがとう」  運転手は、上体を起こして背もたれを見てからそう言った。 「どういたしまして」 「本当助かった……あんたやっぱ救世主だ!」
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