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周囲を見回すとライダーがバイクと共に倒れていて、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。犯人が武装している事を報せなくちゃ。
「A1よりガルモア警察へ、シルカ通り9丁目で銃撃を受けました!恐らく犯人は自動小銃で武装しています!私達に負傷者は居ませんが、一般車が巻き込まれました!救急車を要請します!」
『了解。追跡中の全車、銃撃に警戒せよ。救急車……』
その時、スマートフォンの着信が鳴る。マネージャーの鈴木さんだわ。
「もしもし」
『愛ちゃん、今どこ?!無事なの!?』
「ええ無事です。心配かけて御免なさい。今爆弾テロの犯人らしき車両を追っています」
電話越しに安堵の溜め息をしている様子が聞こえる。
「ズヨネロハスさんにお詫びを入れて下さい。とても不安にしているでしょうけれど、恐らく標的は劇場じゃないわ。パニックに呑まれないで落ち着いて行動するように言って……もし今ズヨネロハスさんの近くにいるのでしたら、直接言います」
『ええ、変わります』
『アイ……』
「ズヨネロハスさん、折角招いてくれたのに御免なさい」
『テロはアイのせいじゃない』
ズヨネロハスさんが話すたどたどしい日本語から、不安な様子が伝わってくる。
「理解してくれてありがとう。今回は劇場が狙われたわけじゃないから、落ち着いて通常の警備手順に従って行動して。パニックに呑まれたらその方が危険よ。解った?」
『うん』
声の調子が普段の様子に戻りかけているわね。これなら大丈夫だわ。
「この件を片付けたらすぐに戻るから。安心してね」
『うん』
「それじゃあ」
電話を切ると、田嶋さんは私達の事故に巻き込まれたライダーに話しかけていた。
「ここで大人しくしてろ、バイク借りるぞ!愛、救急車を呼べ!」
「呼びました!」
田嶋さんは倒れていたライダーからバイクを奪って走り去っていた。
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