エピローグ

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その日の夜、また城山公園に集まる約束をした。皆んなも来る。 ヒロの心がざわつく。 真司がヒロに模型の飛行機をやる約束をしたと奈津子に嘘を言って、夜に車で迎えに来てくれた。 「はい。飛行機。これ持って帰らないと、ダメだろ?」 真司は模型の赤い飛行機を、ヒロに渡した。 「あ、うん。これ自分で作ったの? 良く出来てるな」 「ああ。趣味なんだよ。そういうの。仕事の息抜きにちょうど良い。実は、僕の子供にやる予定だったものだ」 「え?」 「気にしなくて良いよ。まだ小さいから、どうせあげても壊しちゃう。僕は作るのが楽しいだけだし。飾るにしても、他にもいっぱい飾ってあるから嫁はあまり良い顔をしないんだ」 「いや、そうじゃなくて子供って!?」 「もう僕は今年46だよ? 子供くらいいるさ。多少、結婚は遅れたけどね」 真司は笑った。 「……。」 ヒロはあまりの真司の変化に驚いてしまう。 城山公園に着いて、アスレチックまで行くと そこには、見舞いに来たパン屋、クリーニング屋、魚屋、賢一の会社の新社長ーー。 そして、あのお姉さんが居た。 「ヒロは変わってないな。まあ、ほんと数日前だもんな」 社長が言った。 「光太? なの?」 「ああ! お前のおかげで、親父の会社を継げたよ!!」 「待って、当てるから。クリーニング屋さんが、ーー衛だ!」 「ああ」 「で、パン屋は、ーー将希!」 「ああ」 「魚屋は剛志だ!」 「ああ!」 「言われたら、結構変わっちゃったけど、皆んなそんな顔をしてるな!」 ヒロが感心してる中、 「ごめんね。この前は黙っててーー」 「お姉さんが、優子か。だから、表札が佐藤なんだ!」 「ええ」 「今は?」 「大学院に行ってる。将来、美術品とかの修復師になるの」 「そうか! 凄いな。 そう言えば、青野バ……。いや、あの家に居た青野さんは?」 「青野は、お母さんの旧姓よ」 「旧姓?」 「結婚前の苗字」 「ええっ!? じゃあーー。帰りに玄関で会ったのが」 「そうよ。ーー私はあの家に住んでて、近所に住むマダムに殺されたの。それで、両親は離婚して、家族はバラバラになった。死んで生前の記憶を無くしてて全然気が付かなかった。あの時、マダムの家の前で追われたのは、私を見付けたのね。お母さんは覚えてたのね」 「そうか。ーーそうだ! 皆んなどうして、此処に居るんだ? 死んでた筈じゃ?」 「ヒロが助けてくれたんでしょ? マダムをやっつけて」 「いや、俺がやっつけたのはヘッズだけだよ。マダムは俺じゃない。青野、いや、優子のお母さんがあの後入って来てマダムを倒し、俺も助けてくれたんだ。そこで気を失って、その後は分からないけどーー」 「え?」 ヒロはあの後にあった事を皆んなに話した。 「でも、マダムを倒したからって、皆んながなんで生き返るんだ?」 ヒロは訊く。 「なるほど、そういう事かーー」 真司が言った。 「どういう事だ?」 光太も訊いた。 「僕の推測に過ぎないけど、多分マダムはヒロと同じに、こっちの世界の体は本当はまだ生きたままだったんだ。それを悟られないようにしてたのさ」 「え?」 「それで、向こうの世界でマダムが殺されて、その所為で世界がまた変わった。マダムの元々存在しなかった世界になったんだよ。それで、皆んなこの世界で生きているんだ。マダムが最初から居なきゃ、神隠し事件も存在しない。僕らも殺されない。ヘッズも居ない。世界は全て元通りだ。ヒロには記憶が無いようだけど、この世界に来る前に、ヒロはマダムに殺され掛けてる。でも殺す事は出来なかった。それは、あの時のマダムの言葉からも分かる。殺し切れなかった理由ーー。それは多分、その時に優子のお母さんが助けに入ったんだ。家が近所だし、あり得るよ」 「ーー会ってる!? マダムの家に行く前に、優子のお母さんに俺は追い掛けられてる。マダムの家に行かないように、きっと止めようとしたんだ!?」 「そうだね。きっとーー。マダムがこの街に帰って来る事を知った優子のお母さんが、施設を抜けて出て来て居て、襲われてるヒロを見つけて助けたんだ。それで、3人はあの世界に来る事になった。多分、マダムに反撃されたかして、優子のお母さんも、お互いに重傷を負ったんだと思う。それで、3人とも生死を彷徨っているような、重篤の状態だったんだろう」 「なるほどね。そうか! そういう事か!! でも、本当にサニーズは世界を救ったな! 神余さんの言う通りになった! 神余さんにも会ったんだ!」  「僕らも会話こそしてないけど、神余さんには会ったよ。8人目のサニーズだからね」 「でも良かったよ! 結構、見た目は皆んな変わったけど、またサニーズ結成だな!!」 ヒロは嬉しさに溢れそう言ったが ………………………………………。 皆んなの顔は暗かった。 「どうしたんだよ? 皆んな」 「無理なんだ」 真司が言った。
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