エピローグ

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翌日、先日の事がありヒロは外出禁止となった。 一日中、色んな事をベッドの上に寝転び考えていた。 自由の身になったら、あの文字を彫った人間を見つける為に動き出そうと心に決めて居た。 ーーさらに次の日。 その日は朝から病院だった。 経過を診て貰う為に行く。 もう大丈夫というお墨付きを医者に貰いに行くのだ。 これで、自由が手に入る。 「1人で大丈夫なの?」 待合室で名前を呼ばれたヒロに、奈津子が言う。 これから診察だ。 「平気だよ。もし、ダメならお母さんが呼ばれるだろ? もう余命僅かで死んじゃうとかさーー」 「バカ言ってないで、早く言って来なさい!!」 「へいへい」 ヒロは診察室のドアを開けて、中に入るとこの前の医者がいた。 自分の担当だからだろう。 簡単な診察と質問の後ーー、 「大丈夫そうだね?」 医者は言った。 「はい、もうピンピンしてます! もう外出しても平気ですよね? お母さんにも、もう平気だと後で言ってください。外で待ってるんでーー」 「遊びに行けないのか? 辛いね」 「遊びに行くよりもっと大事な事があるんです! それを、調べなきゃ行けない!! 俺には大事な仲間との約束があるんです!!」 そう力強く言うヒロに 「もう、そんな事する必要はないよ? ーーヒロ」 医者は明るい声で言った。 「え?」 医者がおかしな物言いをしたから、ヒロはちょっと引っ掛かった。 それに、そう言えばこの医者は自分を親しげにヒロと呼ぶけど、そんなに親しくもない。本当の名前は浩太なのだ。カルテにはそう書いてあるだろう。 前に目が覚めた時に話したくらいだし。この病院には小さい頃から何度も来てるけど、この医者に掛かったのは今回が初めてだ? 親達も最近は、病院になんて掛かってない。だから、親と親しいという訳でも当然ない。 ヒロが考え込んでいると 「まだ気が付かないかい? 僕だよ、ほら」 医者は自分の胸にあるネームプレートをつまんで見せた。 ヒロはそれを見ると 「えっ!? ええーーーーーッ!!!?」 驚きの声を上げる。 「いつ気付くかと思っていたけど、全然気が付かないから自分で言ったよ。君は頭は悪くないけど、少し観察力には欠けるのかもね? ずっと、目の前に名札があるのに。ま、相変わらずだね?」 「いやいや、ちょっと待ってよ! だって、先生が先生がーー」 「そうだよ。君には昨日の事だろうけど、僕には数十年ぶりだ。久しぶり、真司だ」 医者のネームプレートには『木村真司』と書かれていた。 「本当にあの真司なのかよっ! 皆んなはっ!?」 「皆んないる。君のお陰だ」 大人になった真司は言った。
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