8月31日

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当時と同じような格好で立っている。 見た目の割には、若い服装。花柄のノースリーブのワンピース。勿論ブカブカだ。 ただ、あの頃より更にやつれて、眼窩がえぐれるように凹んでいる。 服とのミスマッチが、不気味さを加速させる。 「あっ、……青野ババア」 思わずヒロはそう呟き、ハッ!? として口を塞ぐ。 ーーヤバイ! ババアって言った事を聞かれたかも? いやいや、そんな事より、なんで青野ババアが居るんだ!?  もう住んでいないんじゃないのか? そう思った時に、 「...,;;.;.;:;:.:;::;:.:::.:..:.......。」 ん? 何か、青野ババアが言っている気がした。 気がしただけで、気のせいかも知れない。 それを確かめようと、耳を済まそうとした瞬間、突如青野ババアがこちらに向かい走り出した!? 向かって来られれば、当然逃げる!? ヒロは踵を返して、一目散に走り出す。 とにかく、若葉公園に向かう道筋に沿って逃げる。 走り出して直ぐに、目の前に女性が見えた。 とにかく、その人に助けを乞う事にした。 「すいません! 助けてください!! 追われてるんです!?」 生垣の内側で庭の花に、ジョウロで水をやっていた女性は、そう声を掛けられて少しだけ驚いた顔をした。 所謂、グレイヘアと言われる白に薄く黒髪が混じった髪、白い絹地のシャツに白いスカート、若草色のカーディガンを着ている。 年齢は母親よりもずっと上だろうが、老けた感じはしない。 綺麗な顔をしている。 ーーマダム。そんな使った事も無い言葉が頭に浮かぶ。 「誰に?」 マダムが微笑み優しく言った。 ヒロは何となくその女性を頭の中で、マダムと仮称する。 そう言われて、振り返ると 「あれ?」 誰もいない。 青野ババアはどこだ!? 「?」 マダムはどうしたの? という顔でヒロを見守る。 「おかしいなぁ?」 青野ババアは消えて居たが、追うのを諦めたというより、まるで最初から居なかったようだ。 幻覚でも見たのだろうか? だとしたら、人生初幻覚だ。ヒロはなんだか他人事のように思う。
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