8月31日

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8月31日

「ヒロ、夏休み明けには子供の自殺が増えるんだって」 「俺が自殺するとぉーー?」 「それは無いわね。アンタ学校好きだもんね。変わってるーー」 奈津子は鼻で笑って言った。 「それが、母親の言う事かよ?」 奈津子はヒロの母親だ。 「いやだって、ねえ? 普通は子供は学校が嫌いでしょう? お母さんも小学校の頃は、学校大嫌いだった。行ったら行ったで、面白かったし。勉強もアンタよりずっと出来た。友達も好きだったけど。学校はなんか嫌いだったわね。ーーなんでかしら? 不思議ね」 「不思議だね。俺も同じだけど、学校は好きだし。唯一夏休みが終わるのが嫌なのは、これが小学校で最後の夏休みって事だからかな? もう、来年は違う学校に居るんだと思うと残念だよ。中学校に行くと、小学校と同じ奴も居るだろうけど、別れちゃう奴も居る。学校の場所も遠くなるし、ちょっとした転校をするみたいで嫌だな?」 「でも、新しい友達もできるじゃ無い?」 「確かにね。ーーあっ、そろそろ約束の時間だ。今日は、みんなで市民プールに行くんだ。今年最後の水泳になるだろうね。泳ぎ納めだ。気合い入れて行かなくっちゃ!」 「じゃあ、早く朝食食べちゃわなきゃ。お母さんもアンタと一緒に出て、パートに行かなきゃ。お昼お金渡すから好きな物買って食べて良いわよ」 「良いの?」 「うん」 「やった!」 別にそれは、愛情の欠如では無かった。 いつもは、夏休みでもちゃんと昼食を用意するのだが、今日は最後の夏休みだから奮発したのだ。と言っても、千円渡すだけだが。 それでも、小学生には大金だ。大体食べたい物は買える。
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