終わらないの始まり

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終わらないの始まり

ヒロが気付くと、もう朝だった。 ベッドで寝ていた。 優子の姿も無かった。  これがヒロが小学生最後の夏休みに体験した、不思議な出来事であった。 いつも通りの朝を迎える。 でも今日からは、学校だ。夏休みは終わった。 父の姿はもう無い。自転車で30分掛けて仕事に向う為に、もう家を出たのだ。 用意された朝食を食べる。 いつもと変わらないおかず。 ハムエッグにソーセージ、サラダ。それにご飯と味噌汁。 変わるのは、サラダの野菜の種類と、味噌汁の具くらい。 昨日もこんなのだった気がする。 「今日は、早いじゃない?」 母の奈津子が言う。 「普通でしょ?」 ヒロは用意された朝食を食べながら言う。 「ヒロ、夏休み明けには子供の自殺が増えるんだって」 「それ昨日も聞いたよ。ボケたの?」 「何言ってるのよ。さっきニュースで見たのよ?」 「じゃあ、また同じニュースがやってて、昨日見た事を忘れたんだね。ボケちゃって」 「何よそれ! ーーて言うか、それどうするの?」 奈津子はヒロの座る椅子の下を指差す。 ヒロの座る椅子には、ランドセルが立て掛けてある。 「え? 何言ってるんだよ。学校だろ?」 「始業式は明日よ? アンタこそボケたんじゃ無いの?」 「え? 今日何日っ!?」 「何日って、8月31日じゃない? 夏休みの最後の日忘れないでよ? 今日小学生最後の泳ぎ納めのプール行くんでしょ。昨日、張り切ってたじゃ無い。今日は、1日泳ぐんだって」 「……そんな。」 「何よこの子。おかしな子ね?」
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