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翌々日の新しい8月31日
「皆んな、昨日は助かったよ。死に掛けたからね」
ヒロがあっけらかんと言う。
「礼は衛に行ってくれよ。衛がペコ(クマのヌイグルミ)をヒロの家に忘れたって、ぐずったからーー」
と光一。
翌朝、また城山公園に集まった。
昨日は、衛のヌイグルミを(取りに入れるか分からなかったが)取りに来た、光一と剛志に出会い救われた。
合わないかも? と心配だった剛志が、必死に護ってくれたのは本当に嬉しかった。少し話も出来た。
その後、城山公園で午前0時まで隠れていると、朝にはまた自宅のベッドに寝ていた。
「まあ死んでも、生き返るけどね。でも、あの刑事さん達は……。」
ヒロがそう言い掛けた時。
「ーーちょっと待てッ!?」
昨日助けられた時に少し話しただけで、普段はずっと無口な剛志が自分から口を開く。声が、尋常では無かった。怒っている?
その事に、ヒロも直ぐに気付いた。
「ーーなんだよ? 急に口を開いたと思ったら。冗談だって、命は大事にするよ。刑事さん達にも、本当にすまないと思ってる。これからは、もっと気を付けるよ。だからーー」
と弁解するが
「痛っ!?」
剛志はヒロの右腕を強く掴む。
「どうした!? やめろ剛志!!? 気持ちは分かるけど、そんなに怒る事かよ!?」
光太が制止する。
「違う! ーーヒロ、この肘の怪我?」
「ああ、昨日逃げる時にやったんだと思うよ。大した事ないけどね。
……………………。
皆は沈黙する。
「どうしたの?」
「お前、傷治ってないのか?」
「うん。小さな傷だし治らなかったんだろ? 平気だよ?」
「逆だよ、ヒロ。大きな怪我ならともかく、普通は簡単な怪我ほど直ぐに治るもんだろ? この世界では、僕達は死んでも次の日には、生き返るレベルだ。俺達以外も怪我なら、死にさえしなければ次の日にはまた、リセットされるんだ。つまり傷が治る」
真司が言う。
「え?」
「お前、傷が治ってねえ。つまり、お前は死んだり、大怪我をしたら終わりかもしれない。お前だけが記憶だけじゃなく、ダメージも新しい8月31日に引き継いでる。それは、この世界でお前だけだ」
光太が言った。
「……。」
やっと、物静な剛志があんなに感情を昂ぶらせて言った理由を理解した。
でも、まあやはり剛志はいい奴ではあるな。
「ヒロは色々イレギュラーな存在だからね。良く分からない事が多いな……。」
真司は自分の顎に手を添え言う。
「イレギュラーって何?」
「例外的って事だよ。でもこれは、本当に不味いかもな……。」
「ーー俺、死んだら終わりなの?」
「安心しろ、俺達が護ってやる。俺達は死なねえから」
剛志が言った。
どうやら、記憶は受け継ぐものの、怪我や死んだらヒロだけはそのままらしい。
つまり、当たり前だが、ヒロだけ死んだらそこでゲームオーバーなのだ。
記憶も受け継ぐ以上、このままこの世界に居続ける限り、ヘッズに喰われ死ぬ恐怖に怯えながらずっと生きなきゃいけないのだ。
一気に深刻な気分になる。
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