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翌翌々日の新しい8月31日
次の日の8月31日は、翠鷺市の北側端の地域は大分変わっていた。
空き家が目立ち、閑散としている。人の気配が無い。いつもなら、老人達がカートなんかを引きながら、散歩している。
老人だけで暮らしてる家や、1人暮らしの老人が多かった所為か、空き家になり荒れ果てている家が目立った。住んで居る人が居ないから、道路の手入れも散漫で舗装は剥がれ同じく荒れている。
月天荘は昨日と変わらない。荒れている。廃墟のようだが、これが通常だ。ヘッズに壊された塀や101号室の窓は直っている。
101号室の窓は、網戸にされ僅かに開いていた。多分、あの中で夜勤明けの神余は、スヤスヤと平和に寝ているのだろう。
『月天荘』の木製の縦看板も、昨日の訪ねた時のままだ。
今にも落ちそうなほど古びているが、壊れてなんていない。
「そういや、月天荘(げってんそう)ってなんて読むんだったんだろうな?」
光太が言う。
「月天荘(つきてんそう)だろ。月天心て歌もある」
ヒロはそう言って、考えるように一瞬沈黙し
「ーーもう、神余さんには訊けないな。力を貸してくれるって言ったけど、これ以上は巻き込みたくない。死んじゃったら、大変だ」
と言った。
「ああ、そうだな」
と光太は染み染みと応えて
「なあ?」
と訊く。
「何?」
「俺らのチームの名前は、サニーズにしようと思う!」
光太は気合を入れて言った。
「そうだな。命懸けで衛を救いに行った、8人目のメンバーの偉業を称えてな」
ヒロは答える。
「ヨシ! そうしよう! 皆んなも良いか?」
「ああ」「うん」「うん」「うん」「いいよ」
と了承の声が皆から返ってくる。
神余は死んでなど居ないのに、まるで名誉の戦死でもしたかのような勢いだった……。
「だっさい名前だな?」
「うん」
「神余さん、小説家として芽が出るのかな?」
「どうかな? センスは微妙だけどーー」
皆んなして、あははと笑った。
でも、悪くない名前だと、内心皆んな思っていた。
ただ己の運命に流されるままに集まっただけの7人が、神余の提案で明確な同じ目的を共有するチームとして存立した。
そして、そのチームの名前は神余の名付けた、サニーズに決まった。
「なあ?」
今度はヒロが皆んなに問うように言う。
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