唐紅の羽衣。

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「汚い手で、羽衣を触らないで下さるかしら? 人間が手にするなんて浅ましいわね」 王子でさえ、羽衣の美しさに圧倒されて触れなかったのに。 私の目の前にいる、如何にも貧しそうな汚い衣服に、品性のない下品な喋り方に、ボサボサの伸びきった髪の大きな男。 そいつが、私の大切な羽衣を手に持ち、値踏みしていたから腹立たしい。 「コレは何の生地で作ってんだ?透き通って綺麗だな」 「――触らないで。汚いじゃない」 「何の生地が教えてくれたら返すぞ」 …………。 人間なんかに何で私が命令されるのよ! 王子みたいな一級品なら未だしも、こんな薄汚い男なんかに。 「この羽衣は大切なのか?」 「……当たり前よ。それが無くちゃ王子のそばに戻れないじゃない」 私がそう睨み付けて言うと、男は豪快にニッと笑った。 「返さない、お前綺麗だ」 あぁ、あり得ない。 こんな人間に惚れられるなんて。 私は、天女よ。自分が気に入った人間以外に、惚れられても嬉しくない。 「どうせ、おーじは当分帰らないんだ。俺の城に案内するぞ」 羽衣をしっかり握って男が歩き出した。 その先には海があり、大きな船が浮かんでいた。  
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