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 りんごんりんごんりんごんりんごんりんご~ん♪  再度オフィスのベルが鳴る。そして「サンチュ総裁様にマルコギ支店長様、失礼しま~す!」と威勢の良い声をかけて、別の事務用B級バイオロイド個体・カム13号が入室する。 「カム13号さん、入室許可を得ずに勝手にオフィスに入ってはならないと、何度私が言えば解るのですか!?」  サンチュ総裁が叱責(しっせき)する。 「すみませ~ん...。それはそうとサンチュ総裁様、コレチゲ・コングロマリットの管財人の、スクジュ弁護士様からメッセージフォンが届いてま~す」 「メッセージフォン?...そうでした。アチラもわが財閥出身の管財人からデジ29号へ、コレチゲの管財権限が移譲するのでしたね。ではカム13号さん、メッセージフォンをつないでくださいな」 「は~い!ではマルコギ支店長様、モニターをお借りしま~す!」  カム13号は、早速オフィスの壁に掛けられていたモニターを調整する。  1分後...。 『サンチュ総裁、自己再生おめでとうございます。そして、お初にお目にかかります。わたくし、3年前に先代のシレギよりコレチゲの管財人を継承しましたスクジュと申します。以後お見知りおきを』  モニターの中で、童顔ではあるが20代後半であろう若い女性が挨拶をする。 「『管財人を継承』...ということは、シレギ氏はもう亡くなられたのですかね?」 『はい。3年前に、私の父のシレギはインフルエンザをこじらせて他界しました。そこで急遽(きゅうきょ)、わたくしが亡き父の跡を継いで、コレチゲの管財人に就任したのです』 「そうですか...。では、私もシレギ氏のご冥福をお祈りしましょう」そしてサンチュ総裁は、マルコギ支店長に向き直る。「さて、マルコギさん、貴方の管財権限は今後、大幅に縮小されます。これから約60年間、ミョック財閥の全権限は、私に集約されるのです。私が自己再生を果たしたことは、すでに財閥傘下の全集落に伝わっているはずです。これまで5年間、各集落が自治を行ってきましたが、今後60年間は傘下集落はわが財閥本部に全権限を委譲しなくてはなりません。カム13号さん、財閥本部に全権限を委任した集落は、現在傘下集落の何%になりますか?」 「はいな!只今集計しま~す!」  カム13号は、持参した携帯端末を操作して集計する。  そして5分後...。 「集計の結果が出ました!只今ミョック財閥に全権限を委任した集落は、98%に達してま~す!あと2~3日もありましたら、ミョック財閥傘下にある全ての集落が、サンチュ総裁様に全権限を委任しますよ~」  事務用B級バイオロイド(カムシリーズ)は間延びした声で報告する。 「全く...。貴方がたのその間延びした声、どうにかならないのですかね?」  総裁は事務用B級バイオロイド(カムシリーズ)の間延びした声にイラつく。 「サンチュ総裁様はそうおっしゃいますけど、これが私たちのシリーズの特性なんですよ~」 「彼女」の方も応える。  そして再度、総裁はマルコギ支店長に向き直る。 「ともあれ、5年間お疲れさまでした。今後60年間、ミョック財閥の全権限は私自身に集約されます。管財人である貴方の役割は今後、わが財閥の収支の計算とその報告がメインとなります。『惑星安全評議会』の決定事項の通り、貴方と貴方の所属するコングロマリットも、おかしな色気を示されないよう、ゆめゆめ忘れてはなりませんよ」 「私も理解しておりますとも。尤も、わがコングロマリットの最終意思決定用人工知能・デジ29号は、ヒトとは異なり合理的な判断を下せるのですがね」  そんな折...。 「サンチュ総裁様~!歩行訓練のお時間ですよ~!そろそろメディカルルームへとお戻りしましょ~う!」  医療用B級バイオロイド個体・サグァ9号が、開け放しにしていたドアの外から声をかける。 「もうそんな時間ですか...。それでは私もこれで失礼しましょう。サグァ9号さん、メディカルルームへと参りましょう!」 「は~い!それではマルコギ支店長様、失礼しま~す!」 本日の要件を済ませたサンチュ総裁は、B級バイオロイドたちを引率してメディカルルームへと向かう。
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