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「麻ちゃんをいじめるのはやめて下さい。健一さんこそ、好きな子をいじめたくなうタイプでしょう」
健一さんは素知らぬ顔でさあな、と流した。
「それで話を戻すけど、夢がどうかしたの?」
「あ、その……。私、絶対富岡くんの夢を見ると思っていたのに、見なかったんです」
「ああ、そう言うことか。夢を見なかったのは、力をコントロールできている何よりの証拠だよ」
え、と困惑気味に聞き返す。
だって、力のコントロールができるようになって妖の記憶を夢に見ることができなくなったならば、むしろこれまで通りコントロールできない方がよかった。今まで妖たちの記憶に触れることで解決できたことがあったのだ。今回も富岡くんの過去を知ることで何か糸口が見つかると思っていたのに。
さて、と立ち上がった三門さん。手際よく茶碗をまとめると台所へと消えていく。
煮え切らない気持ちのままその背中を見送る。ひとつ息を吐いて、私も立ち上がった。
「麻ちゃん」
テレビに視線を向けたまま健一さんが私を呼び止めた────。
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