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雪ちゃんの言葉が胸に刺さった。
『蛍ちゃんは、蛍ちゃんなのに』
その通りだ。
富岡くんは富岡くんだ。妖であろうと、雪わらじであろうと、雪ちゃんにとっては唯一無二の幼馴染だ。でも、でも。
「……ねえ、雪ちゃん」
駄目だ。駄目だってわかっているのに。
もし本当のことを話したところで、雪ちゃんに信じてもらえるかどうかは分からない。信じてもらえたとしても、雪ちゃんや富岡くんを悲しませる結果になるかもしれない。
でも、もしかしたら。
「私、富岡くんがどこにいるのか、どういう状況なのか知ってるの」
雪ちゃんの目が大きく見開かれる。雪ちゃんよりも先に詩子が私に詰め寄った。
「どういうこと!? どうして麻が知って……」
言葉を不自然に止めた詩子はなんとなく勘付いたらしい。
雪ちゃんが私の目をじっと見つめ返した。疑うようにその奥の瞳が揺れている。
もしかしたら何かが変わるかもしれない、そう思ったのだ。
「雪ちゃんは、富岡くんがどんな姿でも信じてあげられる?」
揺れていた瞳が強く私を見据えた。
「────蛍ちゃんは、蛍ちゃんだよ」
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