参章 雪童子と友人

75/128
1286人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
*  元号が明治に代わるころ、ある吹雪の日に雪童子は東北地方の山間に一度目の生をうけた。  多くの雪童子が住んでいたその地域に生まれ、たくさんの妖たちに見守られながら育ったのだ。生まれたばかりの雪童子の面倒をみていたのは、六花と言う名の妖だ。この妖もまた雪童子であった。見目は十七、八ほどの青年だがその齢は全ての生を合わせれば遠の昔に百を超えており、雪童子はそんな彼を「兄や」とよく慕っていた。  雪童子は季節によって住む場所を移す。夏の日が高いうちは山影や谷に、冬の間は人里の傍で暮らすこともある。  妖の中でも天狗やろくろ首と並ぶほど、ひとの生活と同じように生きる。なによりも雪童子は人を愛する妖なのだ。  雪童子が生まれて七度目の冬、雪童子は六花に手を引かれ初めて人里に降りた。人々の暮らす集落に「兄や、兄や、あれはなに!」と雪童子は興奮気味に手を引いた。珍しい物ばかりだったのだろう。六花は微笑みながら雪童子の手を引いて歩いた。  その年の冬、彼らは初めて人里で暮らすことになった。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!