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いくつか名前をあげて、六花はふと窓の外を眺めた。今日の外は珍しく穏やかに雪が降っていた。月の光が強い夜だった。雪が淡く光り輝いている。
「……────蛍雪」
ふと呟いたそれを雪童子が繰り返した。目を丸くしながら己を見上げる雪童子の頬を六花は優しく撫でてやった。
「ここからうんと遠い国の昔話に、夏は蛍の光を、冬は雪あかりを頼りに夜も勉強に勤しんだ、という話があるんだよ。そのお話から『蛍雪の功』と言う言葉が生まれたんだ」
「兄やは物知りだね!」
ふふ、と小さく笑う。
「お前の名前は、蛍雪にしよう。名前に負けないくらいたくさん努力するんだよ、蛍雪」
「わかった、兄や!」
蛍雪と名付けられたその雪童子は、六花の首に腕を回して甘えるように抱きついた。
「やれ、今日の蛍雪は甘えん坊だね」
己の背を撫でる六花のひんやりとした手が蛍雪は好きだった。
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