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月が真上に登るころ、六花と蛍雪は近くの社へ参拝に向かうため外へ出た。六花と手を繋いであぜ道を歩いた蛍雪は機嫌よく鼻歌を歌っていた。移り住んで初めての夜、その土地にある妖の社へ挨拶をしに行くことにしたのだ。
「おいっ!」
六花と他愛のない話をしていると、土を蹴る小さな足音が近付いて来るのに気が付いた。
「お前らだ! チビとヒョロヒョロ!」
明らかに自分へ向けられている声に、蛍雪は眉を吊り上げた。
「誰がチビとヒョロヒョロだっ」
勢いよく振り返ると、少し大きいどてらを身に着け襟巻に顔を埋めた少年が立っている。年は蛍雪よりもひとつかふたつほど年長に思えた。片手に提灯を下げている。
「兄やを馬鹿にしたな!? 誰だお前っ」
六花を庇うように一歩前に出ると、少年を睨みつけた。
「本当のことを言っただけだ!」
「何だと!」
拳を胸の前で構えた蛍雪の頭を、六花が「こらこら」と苦笑いで軽く叩く。
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